シャッフルレビュー第61弾、
今回はこの曲。
アンジュルム「わたし」
2015年11月11日発売のトリプルA面Sg『出すぎた杭は打たれない/ドンデンガエシ/わたし』の1曲。
・作詞 福田花音 ・作曲 秦誠 ・編曲 浜田ピエール裕介
表記上はアンジュルム名義であるが、本作がラストSgとなる、福田花音のソロ曲。
卒業後、作詞家へ転向という事もあり、彼女自身が詩も担当。
キラキラとしたサウンドの中で、肩書きや立場が変わっても、本当に好きになれるかという、人間性まで問いかけてくるアップチューン。(☆3.9)
アンジュルム『わたし』(ANGERME[I am.])(Promotion Edit) (アンジュルム)
基本的には表現の仕方が違うだけで、この曲の本質の部分は、事務所の先輩でもある
森高千里の「私がオバサンになっても」と似た世界観だと思います。
森高が、「私がオバサンになっても本当に変わらない? ~ 若い子には負けるわ」
という、フレーズで”調子の良い事言ってても立場が変われば、あなたの感情もコロッと変わっちゃうんでしょ?” と指摘していた事を
この「わたし」では、1曲を通して1つの講義のように語られています。
移り気 気質のヲタリスナーにとっては、ある意味拷問のような1曲かもしれません。^^;
個人的には、歌詞も好きです。
「こういうことは口に出して 言うものではないんだけど」
なんてフレーズも、芸術性は無いけれど(歌詞としてはまず採用されない)、
プロの作詞家には絶対書けない言葉だと思いました。
そりゃプロの作詞家の小洒落て綺麗な詩も素晴らしいですが、
全てが洗練されていれば良いってものではなくて。
少なくともこの曲においては、初々しさや荒削りもな部分も出ていることで、よりリアルに彼女の本音を感じられて好きですね。
福田花音の”トリセツ”
歌詞の方向性としては「調子良いことばかり言っといて、離れたら許さないから」という束縛系のものではなく
「きっと離れていくだろうけど、そういうことも全部、私は分かってるんだからね」という牽制的な方向性のもの。
彼女の普段の性格は軽くしか知りませんが、この楽曲的には
ある意味マウント取りというか、プライドの高さを感じる歌詞でもありますね。
ただ、そうした「人の心の特性」を理解した上で、それでも「好き」と言ってくれるなら・・・つまり
感情の真意は見抜くけど、その分その有り難みも知っている という事でもあります。
卒業後における、彼女にとっての「好き」は、その言葉以上の価値を持つものとなる事を意味している、ともいえますね。
また彼女の「シンデレラの生まれ変わり」というキャッチフレーズを例に出せば、、
ある意味卒業して(夜の12時を過ぎて魔法が解けて)、本当の私になることで、
肩書き(グループ、から個人)や、外見(華やかなアイドル衣装)が変わってしまって、ガッカリする部分もあるかもしれないけど、
私という人間自体は、変わらないのだから、ちゃんと一人の人として見て欲しいということかもしれませんね。
そう考えると、冷静で現実的な側面を持ちつつも、心の中では本質を見抜いてくれる王子様を信じてるという、意外とロマンチストな部分もあるのかもしれませんね。
という事で少々くどく、講義的な歌詞の世界観ではあるものの
可愛らしくも軽快なメロディーが見事に中和させていて、
結果的にネガティブ感やドロドロ感もない、爽やかなアイドルPOPsになっています。
森戸も「ハッ!」とするデモ音源
『MUSIC+』(現アプカミ)の番組コーナーで、「わたし」の作曲者でもある、たいせいの音楽講座にて貴重なデモ音源が聴けるので紹介します(引き続き「今すぐ飛び込む勇気」のデモも聴けます)。
※該当箇所から再生されます
(このカントリーのメンバーを見ているだけでも感慨深いですが、終始ノリノリな稲葉に対して、ここぞの部分でリアクションの森戸ら3人の対比も微笑ましい。)
編曲前なのでサウンドも、少しゴリゴリ感が強め?ですが、
一番印象的なのは、サビの譜割りが短片的で、
完成版と全然違うことですね。デモ版の余韻を残す感じもこれはこれで良いですが、
やはり完成版の譜割りの多い方が、語りたいことが沢山ある!!感が出ていて、彼女に似合っている気がします。
個人的には非常に、曲の世界観含め好きな楽曲です。あんまり比べるのは良くないですが、卒業曲でこのクラスの曲が貰えたら大当たりだと思います。
かつて(キッズ時代)は”神童“と呼ばれ、ちやほやされていた?時期もあった彼女。
その後、シンデレラの生まれ変わり(キャラ)を経たり、グループにおいての立ち位置など、
その時々、周りの大人たちやファンからの対応の変化(良い事もそうじゃない事も)を、人一倍敏感に感じて活動していたんじゃないかなと思います。
そんな彼女だからこそ、世の中に「それはただの綺麗事じゃないかな」と、切り込みをかけても、ちゃんと攻撃力と説得力を感じます。
それがこの曲の歌詞にも表現されていると思うし、
今後の作詞においても生かされる事でしょう。今後の彼女にも期待ですね。
という事で、今回はアンジュルム「わたし」楽曲レビューでした。
次回もお楽しみに。