浜崎あゆみ30万枚限定CD戦略-コラム1章appears「時代を読むセンス」

今回は、浜崎あゆみ「Daybreak」楽曲レビューから、派生する形で書いた記事です。参考浜崎あゆみ「Daybreak」レビュー こんな時代も、いつかのあの日の空の下

彼女の30万枚限定盤のCD戦略と、成功~ブランド崩壊までを書きました。長文記事になってしまったので、タイトルにある様に1~順にに分かれたコラム記事となっています。

この1章ではシングル「apperas」の時期を中心に取り上げています。

所々にトゲのある表現もあるかもしれませんが、アーティストやavex、楽曲を批判するつもりは全くありません(ここで挙げている曲はどれも好きな曲です)。あくまでも本人や作品の内容と切り離した、企業のセールス商品とその売り出し方としてシングル群を語っているので、どうかご了承下さい。(敬称略)

「appears」発、30万枚限定生産というブランド

99年11月10日に浜崎あゆみ2ndアルバム(以下AL)『LOVEppears』が発売されました。この30万枚限定シングル(正式には「30万枚完全限定生産」という名目)CDの歴史は

この2nd ALと同時リリースされたシングル(以下Sg)「appears」から始まりました。

PVはこちら。

浜崎あゆみ / appears   (ayu)

この「appears」は、アルバムと合わせて白あゆ黒あゆジャケットでも話題に。発売まもなく品薄状態、一部では当時プレミア価格が付くなどレアアイテム化しました。

LOVEppearsappears

ここで、先行シングル(同時発売も含む)についてクローズアップしてみます。

先行シングルの意義とは?

一般的に商品としての先行Sgの役割は、その後に控えたアルバム(本体)の、いわゆる顔見せのプロモーションを担うポジションにあります。広い層に向けて、美味しい所を切り取って試食してもらい、「気に入った人は、是非アルバム買ってくださいね!」という。シングル・アルバムとVer違いで収録し、両方セールスを伸ばせる様に工夫されている事も多いですね。

また、メディアプロモの面においても、ランキング番組対策にもなる(シングルのランキングは有っても、アルバムランキングは省かれることも多い)し、歌番組で披露する際も 実際には同じ曲であっても、一般リスナーには「最新アルバムから、アルバム曲を披露!」よりも「最新シングルを披露!(この曲を含むアルバムも宜しく)」の方が圧倒的に求心力心があるはずです

他にも、単にアルバム曲(リード曲だとしても)だとPVを作るのは、余程売れているアーティストでないと難しいですが、先行シングルにする事でSg曲PVとしての予算も回せますし、場合によってはアルバムのプロモ予算も合算されて、先行Sgは普段よりも豪華なPVになるケースも。

TVやメディア側もその方が取り上げやすいですし、そうした事からも先行シングルは実質的なセールスよりも、いかに関心をアルバム(本体)に繋げられるかに、重点を置かれるケースが多いと思います。

ちなみにリカットの場合はALプロモの延長線で、延命(ロングセールス狙い)的な意味合いが大きいと思います(契約や予算の都合上、リカットでお茶を濁すケースもみられます)。

ともかくアルバムの宣伝隊長な訳で、話題やALへの関心を集めれば大成功な訳です。裏を返せば、数字の面では大きな期待出来ない。そこで、どうせ大きなヒットもロングセールスも期待できないのであれば、思い切って30万枚限定とする事で、短期的に一気に売り切ってしまおうという考え方も合理的な戦略だと思います。

その後のALや浜崎自身の人気が高まるほど、その限定商品にも付加価値が生まれ、そのアイテム(限定CD)をいち早く所有した事自体にも価値が出てくる。その優越感を味わったリスナーは、次の機会も同じく手に入れようと思うはずだし、掴み損ねたリスナーは「次こそはGetしてやる!」という気持ちになる。レアアイテム化すれば、そこにはファン以外の限定モノが好きな音楽コレクター達も集まってくる。

多くのリスナーが動けば動くほど、初めはごく一部のことかもしれないが、「何か凄いことになってるらしい」と、人が人を呼び、それはブームやヒットアイコンを生み出す原動力にも繋がる。

ある意味セールス面では死に枠だった先行(リカット)シングルも、ある程度のセールス分も確保した有用な弾になる、と。その為の”30万枚限定”というブランドマジックなのです。

当時のこの売り方は、ビジネスとしても画期的かつ堅実的大成功だったと思います。

では、30万枚限定の「30万」という数値は、どこから来たのか?そこに迫ってみます。

30万枚という数値

この年の浜崎のSg群を挙げると「WHATEVER」22万枚(累計)で、ALはミリオン突破したものの、Sgは昨年の延長線という状態。

続いて「Love~Destiny~」69万、この曲は確変と言っても良いですが、デュエット含めつんくとのミックス展開で、大げさに言うと準企画物Sgで、この数値を単純に彼女自身の実力換算するにはまだ不安要素もあったと思われ。

実際にその次のSg「TO BE」が36万枚のセールス、確実に分母は伸ばしているとは言え、アルバムもシングルも全てチェックする様なコアな固定ファンは、そこまで急に育つものでもないと。浜崎最後の8cmサイズCDとなる。

「Boys & Girls」は初のマキシSg、多数トラック収録(その後も続きますが、その第1弾)という事でも話題を集め初のミリオンヒット。

『A』は全て本人出演のCMタイアップ4曲A面Sg(初回4タイプ、後にゴールド盤も)という豪華さで、自身最大セールスとなる約160万枚を売り上げた。

この2大勝負作の後だから、ちょっと少なく見積もったようにも思えますが、どんなアーティストでもガクッと売上の落ちるアルバム同時リリースのSg。

その辺も踏まえて、30万という堅実的な数値にして来たのは、avexとしても割と冷静に状況を捉えていたのかなと好印象ですね。

結果として大成功、「appears」は30万をほぼ完売しました。

ちなみに参考として、同時期のavexの第一線アーティストのセールス(累計)を挙げると

安室奈美恵「LOVE2000(AL先行)約23万枚

Every Little Thing「Pray/Get Into A Groove」(活動再開第1弾)約41万枚

先行シングルの弱点のセールス面においても、上記他アーティスト例や、半年前の「TO BE」の累計36万枚と比べても、アルバムと同時リリースで30万枚というセールスは、アルバムへの引導効果だけでなく単体作品としても十分に評価できる結果だと思います。

という事で第1章では、「apppears」の時期を中心にお届けしました。

次の2章では「Kanariya」のSgと、浜崎とglobeの意外なリンクポイントにも着目し、そこから見えてきたもう一つの浜崎あゆみの可能性に迫ります。

是非続きもチェックしてみてください。

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