FLYING KIDS「Flying Kids 大人になれない子供達」 孤空に嘆き舞う完全犯罪

2023年に聴いたベスト楽曲のレビューです(発売年問わず)

上位曲として選んだ中から今回はこの曲。

FLYING KIDS「Flying Kids(大人になれない子供達)」

1993年9月22日発売の7枚目のAL『FLYING KIDS』タイトル曲。

日常の中で、感情の洪水から一人になった時、ふと隙間から流れる様な

心の空洞が感じられる楽曲☆3.9

一般的にALのタイトル曲というだけでも「本命曲か!?」とハードルが上がるものだが

そのさらに最上級とも言えるグループ名を冠したタイトル曲である事からも

当時の彼らにとって、特別なポジショニング曲であると分かる。

FLYING KIDSは「幸せであるように」に代表される

ちょいエモファンキー系POPSを歌うグループの印象が強かった。

そんな彼らの同名楽曲という事で

明るくファンキーでノリノリな曲だと思っていたが、全く違う印象の曲だった。

なんだろう、すごく人間ぽい、生身な感じ。

罪を犯した主人公が教会で懺悔するような雰囲気もある。

絶望まではいかないが、救いを求めてる感じもあるし、

悲劇の主人公ぶる、達観するでもなくて

幸せを知っているからこそ来る喪失感や虚無感やあきらめ

陰寄りの感情が溢れ、曲の世界に引き込まれ浸ってしまう。

翼はまだついている

子供たちの心には翼が付いてるって ママはいつも優しくそういって“と

切ないサウンドと憂いある歌声にワンフレーズ目から痺れる。

ラストフレーズで上記フレーズ

“ママはいつもそう言ってが、

“ママは今日もそう言ってと置き換わりもう1度出てくる。

恐らく、初めのフレーズのママは自分の子供の頃に聴いた言葉の回想で

現在はもう同じ空間には存在しないと思うのだ。

敢えて最後のフレーズで「今日も」とする所に”救い“や”祈り“を求める切なさ、

若しくは、精神世界が一線を超えてしまった若干の”狂気さ“を感じさせるのがまた凄い。

楽曲自体も良質だけどクオリティ等とは別のベクトルでエグい曲。

そういう意味では少し前に書いた チャゲアスの「NとLの野球帽と近いエグられ系にも思うが

ただ大人になれない~の方はえぐり方もじんわりソフトなので、日常的に普通にリピート出来る楽曲(再生回数も600超、後に出てくる別Ver合わせ約800回になっていた)

大人になれない?なりたくない?

現代では、表現方法含め多様化でこうした印象も減っている気もするが

特に10代の頃は大人になるとしがらみに縛られて

汚れる、つまらなくなる、個性が死んでいく・・・等

ネガティブな印象も持ちやすいだろう(実際はどうかは置いといて)

芸術家達の多くは感情が豊かで、その感性も子供の方が豊かだというイメージもある。

サブタイトルにもある「大人になれない子供達」。この曲の歌詞からなぞると

大人になれない子供達 = Flying Kids = 心に翼を持った子供達

という事になる。

一種のピーターパンシンドロームも感じるが

果たして大人になれないのか、なりたくないのか。

世間への抵抗なのか、意図してならない(拒否な)のか

少なくともこの曲の主人公は、向かい風に吹かれようとも

負けずに高く舞い上がり飛んでいたいのだ。

それがスカっとアッパーに歌い上げていれば

「そうだぜ、俺たちはいつまでも大人なんかにならねえぜ~!!」という

分かり易い方向性の反発心として、シンプルに受け止められる。

だが、ブルースの様な渋さで、懺悔・嘆きの様にこれらが歌われるのだ。

そこには、表面の歌詞以上の意味や想いの深さを感じる事が出来る。

本当は大人にならないといけない事を理解しつつ

後ろ指さされても、このままで戦っていかなきゃならない

大人になれない子供たち“である事の苦悩や葛藤、憂いが感じられるのだ。

子供でなきゃいけない理由はそれぞれの解釈だろうが、

この曲の世界観だと子供達が大切なものを守るため互いに何か罪を庇い合い、

完全犯罪をしようとしているなんて情景すら浮かんで来る(暴走してるが、やはり祈りや懺悔感を強く感じる)

はたまた、戦場で1人生き残った兵士が、ボロボロになりながら焼け跡を見渡し

防衛反応で精神を守るため、子供の頃の母の言葉と共に回想している様な世界観も見えてもくる。(どれが正解とかでなく、作品の解釈は無限大ですね)

また、曲調から勝手に、翼を失ってしまった 様に勘違いしてしまいそうだが

歌詞では、傷つきつつもしっかりついている翼で

“おもいっきり広げて 夢の続きをまだ見てる”

だからこそ、過去形でもなくFlying

曲調に続きここでも”まだ見てる”と自ら歌う事で、

一般社会が求めるものと違う世界線を進んでいる事を、

自分達の価値観だけでなく、その”“にある物を きちんと自覚していると思われる。

グループ名にも冠されているように、活動を続けて行く上で

“翼” は社会を無視した自由の象徴などでは無い。

批判もされたり、重たくも、傷つきもする、いつか羽ばたけなくなるかもしれない

それでも

飛び続けるため、翼を背負う という覚悟を持って決めた答え(挑戦)が、

進行形でもある FLYING KIDS なのだ。

(あくまでも筆者の解釈)

そう思うと非常に感慨深いグループ名だ。

その後リリースされた”Midnight Sky Version”

ツイッターで22年末につぶやいた、激しびれ曲に会ったとはこの曲のことだった。

そして”多分一年ラグの2024年に振り返るんだろうなと思いながら浸り聴く“と続けた。

たった1日で運命的な曲だと確信しつつも、時期が時期だけに22年のベスト曲からは外し、

現実として24年に23年のベスト曲として記事を書く事となった。

そんな運命的な出会いからヘビロテ期間を経て、別Verが存在している事を知った。

93年のAL発売から約1ヶ月後、10月に発売されたSg『恋の背中』のB面に

この曲が”~Midnight Sky Version~“として収録されているのだ。

(発売が1ヶ月差なので、幾つかアプローチを試した内の本題ALから漏れたVerがこちらなのだろう)

そのVersion名からヤバイ。期待しかなく、ハードル上がって聴いた時に

ガックシパターンではと怖くもあったが、3月には覚悟を決めて8cm盤を手に入れて聞いた。

(その半年後の23年10月には公式の音源が一斉リリース(公開)され、30年前の作品なのにリアルタイム感も味わえて運命を感じた)

こちらのVerは、アレンジが大きく変わっている訳ではないが、

少し聞き込んだリスナーにとっては別物として、スピンオフ的にも楽しめる。

原曲の思いつめた様な重さが、歌の面でもサウンド面でもややカジュアルになって

POPSとしてリピートするにはこちらの方が向いてると思うし

コーラスなども含めて、お茶濁しのVersion増やしではないのは伝わって来たが。

こちらの公式音源も公開されているが、やはり原曲Verの世界観をじっくり聴いて欲しい為

敢えて紹介はしないので、楽曲が気に入った人はいつかチェックしてみて下さい。

彼らのレビューは

FLYING KIDS「僕であるために」レビュー ジグザグ スピッツちゃうぞ

以来ですね。9年前のほぼ同時期なのも何かの縁を感じました。

数年前に「天使気分はジゴクの底まで」というクールで刺激的な曲にもどハマリしましたが

今回の曲はそれを上回り、出会いを感じられた楽曲でした。

と言う事で今回はFLYING KIDS「Flying Kids(大人になれない子供達)」楽曲レビューでした。

年間上位曲、あともう1曲レビュー上げたいのがあるのですが

とりあえず次回は2023年ベスト楽曲まとめをアップ予定です。

DEHA

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