gleeで聴く「New York State Of Mind」故郷と夢舞台で交差するWスター決戦

2024年に聴いたベスト楽曲の中からピックアップレビューです(発売年問わず)

今回は紹介するのはこの曲。

「New York State Of Mind」

1976年発売AL『Turnstiles』収録曲。邦題「ニューヨークの想い」

新旧・国内外問わず、数多くのアーティストにカバーされ続けている。

哀愁溢れるサウンドにのせて故郷への想いが紡がれるバラード曲(☆4)

邦題にもある「ニューヨークの想い」

普通なら夢を抱えてNY上京への思いに感じるが

ビリーの場合は、憧れではなく故郷としてのNYへの想いだ。

彼はこの曲も収録された『Turnstiles』AL制作に入る際に

長くアーティスト活動の拠点にしていたLAから

久々に故郷のニューヨークへ戻ることに。

州を超える長距離バスの グレイハウンドに乗り

カリフォルニアからNYに帰郷する際に、この曲の歌詞が書かれたそうです。

(LAで)リムジンやスター達も大勢見てきたし

名所なんかも行ったりしたけれど、

やっぱり自分の原点、魂はNYにあるのだと気が付く。

成人してから故郷への愛に気付き、それを発信できる格好良さ。

人間としてこんな生き様に憧れる。

にしても故郷がNew Yorkなんて格好良すぎる。

ビルが立ち並ぶビジネス街やブロードウェイの華やかな印象が強いが、

例えば東京=都会イメージの様に

「いや、東京って言っても広いからね」ってのと同じで

“New York”というネームインパクトが強烈なだけで、

実際生活してる人からすると、また違う風景や情景があるのだろうなと思います。

地名や新聞名が出て来るのもエグってくる。

メロディも詩も痺れるし、ずーっと聴けるスタンダード曲だ。

さてこの曲が24年ベスト曲まで上り詰めるきっかけとなったドラマ作品を紹介。

時系列的にはこちらの記事の『glee』全国大会。結末を変えた 年月と奇跡

直後のエピソードになるので、気になった方はこちらもチェックしてみて下さい。

ドラマ『glee』を通して観る

海外ミュージカルドラマ『グリー』。田舎にある高校で

歌い踊るグリークラブにまつわる人間模様を描いた作品。

昨年夏に約10年振りにglee全話見返した時に、1番楽しみにしていたのが

この「New York State Of Mind」のパフォーマンスだ。

この曲はドラマの何年か前にライブイベントでのカバーを聴いてから好きだった楽曲で。

1週目にCDを集めていた当時プレイリストにも入れてよく聴いていた。

正確にはハマるのは2度目なのでベスト曲選出は反則技なのだが

歳を重ねる程好きになる所もあり、当時よりも24年リバイバルの方がよりドハマりした。

ただ記憶ではシ-ズン2以降で披露されたなー、

曲はたまに聞いていたのでレイチェルがメイン歌唱+誰かいる?位の印象で。

どんな演出でパフォーマンスされたか内容は一切覚えていなかったのだ。

そんな訳で、このシーンにたどり着きたいために全話見返したといっても過言ではない位期待していた。

毎回、エピソードが進む度に、ついに来るか?来るか?という気持ちで期待に身構えながら見ていた。

ついには3rdシーズン最終話で、レイチェルが1人NYへ旅立つシーンで歌が歌われるのだが

ついにきたーと思ったら全然違う曲で、その曲自体は悪くないのにテンションダダ下がりしてしまう始末。

そうして3rd シーズン終了。心だけ置いてけボリな気分だ。

もうここまで来たら4thどころか5thシーズン以降かもしれないし、

目の前の作品・パフォーマンスを楽しむ障壁になってはもったいないので、

期待するのは止めて、ここでようやく気持ちを切り替えたのだ。

・・・のに

ズルイなあ、皮肉にも待望の再会の瞬間はその第1話目に訪れた。

シーズン2から「くるか?くるか?くるぞ!」とずっと身構えていたのに、

諦めた瞬間に来るという。

ただし、これが不幸中の幸いで、

一旦無防備となった事で、再会時の破壊力がさらに増して届くことになった。

※以下ネタバレ注意

パフォーマンスの背景

3rdシーズンラストで全国大会で優勝し、

初期からの主要メンバー達も多数卒業しそれぞれの道へ。

本作の主役ともいえるレイチェルは

皆に見送られ憧れのNYへと旅立ち幕を閉じた。

続く第4シーズン

ストーリーはNYgleeクラブ2つのステージを切り替えながら同時に進んでいく。

いつも以上に期待と不安に包まれた

グリークラブは前年度の全国大会優勝後という事もあり

新入生達からの入部希望が殺到。

シュー先生は定例の新入部員オーデションを開催する。

現役のグリー部員達も先輩達が卒業し

次の主人公は誰だ?私だ!俺だ!と思いつつも、

どんな奴が入ってくるのかと審査員ポジションで会場へ。

ドラマ内での配役としてのポジションも、中の人達の今後のキャリア動向においても

この展開次第で大きく変動していく事も彼らは知っている。

残ったメンバーのファン達も「新シーズンでは推しがスポットを浴びるんだ!!」と

画面の向こうでギラギラと見ている。

これまでの主役ポジションであるレイチェルのファンは勿論の事、

ドラマ作品としてのgleeのファン達、視聴者達から

新入部員たちは、どれだけの物を魅せてくれるのか?それだけの器があるのか?

視聴者が席に座って審査・見ているのだ。

この緊張感に、こちらまで唾をごクリと飲んで入り込んでしまう。

もはや、ドラマであってドラマじゃない。

気分はまさにリアルオーディション風景だ。

度々画面に登場していたハンチングを被った女の子。

見た事あるような、あれ・・・何だか大事なことを忘れている気がする。

そんなグリークラブ新入部員オーディションの

ハンチング少女マーリーと並行して描かれるのが

かつてグリークラブのスターだったレイチェル。

慣れないNY暮らしの中、レッスンでも先生から圧を掛けられたり

日々奮闘する中で、新しい学校での

新芽を摘む日“とも言われる実力を試されるステージで

作品としてもNYでの初歌唱パフォーマンス。

互いに面識もない2人は、運命が交差するように

共にこの楽曲を選択し歌唱する。

曲目紹介する時の会話で

ビリージョエル作曲」「カバー(でヒット)したのは?」

バーブラストライサンド

NYとグリークラブのシーンを交差した会話からパフォーマンスが始まる。

このさらっとした演出もニクい。

バーブラはシーズン1から何度もその名前が登場していた

レイチェルが幼い頃から憧れてきたスターだ。

元はビリーの曲であるが、レイチェルにとってバーブラのNY~の思いも重なっているのだ。

これだけでもゾクッとするが

レイチェルにとってNYは憧れの場所(バーブラも含め)、夢を叶える場所としてのNYへの思い。

同時に本当の故郷への想いは、卒業し旅立ったライマにあるグリークラブにもあるのだ。

さらにオーバーラップする様に、かつて苦楽を過ごしたグリークラブでは

今まさに新たなスターが産声を上げようとしている。

作品とスタッフ、楽曲へのリスペクトと愛を持って、

この「New York State Of mind」はパフォーマンスされる。

魅せろ聴かせろ届けるんだ

演者たちに、画面の向こうの人々に

この楽曲は4thSeasonの要となるような曲で

シーズン中盤あたりでNYADAに通うレイチェルが

NYの日々に挫けそうになった時のソロパフォーマンスでも十分成立する曲だ。

1歩間違えれば公開処刑にもなりかねない

レイチェルと交互に挟んで新旧エースデュエット演出にして

それを期待の新人マーリーの初歌唱というイベントにぶつける。

それを他の曲と同じ様に2番カットの容赦ないTVサイズの尺の中にギュギュッと詰めて

惜しみもなくぶつけるのだ、いやだからこそぶつけるのだ。

まだ視聴者のマーリーへの感情や評価が形成・固定化される前に

レイチェルとマーリー、2人の物語を交差し重ね合わせて

一気に勝負を掛けてきたのだ。

心が揺れ動いている時に、脳がそれを好意や恋心と勘違いする事を

「肝試し効果」なんて呼ばれるが、その心理効果も計算されていると思う。

レイチェルの勝負シーンにドキドキの緊張感、エールを持っての眼差しが

そのまままマーリーのオーディションのドキドキに交差し

すっかり2人の今後を応援したくなっている筈だ(と言ってくれ)

これがシーズン1の番組開始以来、最大の大変動となるシーズン4の1話。

スタートダッシュのバフとデバフが同時にビンビン掛かりまくっている状況で披露される。

この演出がダブルミーニングだとか伏線や回収どころの騒ぎではない。

考えれば考えるほど、沢山の運命や情熱が無限に交差して目眩するほど熱くなるのだ。

全て戦略だとしてもこの演出の素晴らしさにひれ伏すほどの

反則級のドパミンドバドバ案件過ぎてヤバイ。

もっとセットや演出、カメラワーク等が凝っていたり

予算が掛けられていそうな楽曲はドラマ内でも沢山あるし

映像としてアクションやダンス面での動きは全く無いのに

ここまで作品、キャスト、スタッフ、視聴者の

心理や背景まで巻き込んで大きくぶん回してくるパフォーマンス

なかなか無いと思う。

しかも、恐らくレイチェル側への配慮だと思うが、この2人だけの

共演パフォーマンスはこの曲が最初で最後なのもレアでより尊い(他にもあったらすみません)

自分はこの曲のシーンまで何故かマーリーの存在もすっかり忘れていたので

この「New York ~」のドラマチックな演出の中で、

あぁー!!これだ!!そう言えばこんなシーンだったかも!!!と

モヤーっとしていたあのハンチング少女の輪郭がクリアになり

マーリーという人物の記憶が蘇り、

記憶を取り戻すのと同時に再会の追体験で、物凄い破壊力で響いてきたのだ。

マーリーの初めは不慣れ感ありつつ後半では、

天使が安らぐ様な笑顔で歌い上げていて1曲の中でも成長物語を感じて感動するし

レイチェルのいざ勝負!の時の貫禄と”やったれ安心感”も半端ない。

二人の歌唱も取り巻く演出も最高だ。

このシチュ、モー娘。で言うなら

今回の曲のシュチュエーションをモー娘で例えるなら

時期的には5~6期の後藤卒業位の時期で、

NYのレイチェルは、ソロになった安倍なつみがミュージカルのオーディション時。

1~4期メンバーとその既存ヲタ達の視線を受けながら

オーディション受けるマーリーが高橋愛

2人が歌う曲は「ふるさと」が分かり易いし無難だろうけど「上京物語」?うーん…

推したいのは「さみしい日」かな。

これらをイメージするとモー娘。ファンの方にエモさが伝わるかも知れない!?

まぁこの作品全体でマーリーを見ると

スキルはキレとアクを抜いた高橋愛、初期の期待値の高さは小川麻琴

サクセス的には久住小春(マーリーを演じたメリッサ・ベノイストはこの3年後には女性版スーパーマンのTVドラマ『SUPERGIRL』(15~21)にて主演を務めた)

外人気の方が高い感じも久住が近い。脱線失礼・・・

マーリーはNewレイチェル(スター)なの?

マーリーはDisneyドラマに出てくる様な、健全な光属性の万能タイプで

gleeに出て来るキャラとしては非常に珍しいタイプだ。

(取って付けたような母や貧しい(初期だけ?)、拒食症などの設定も共感して貰うため感が見え隠れする)

正直レイチェルほど万人を唸らせるような歌唱力はこの時点では感じなかったし

ビジュアル面で選ばれたのでは?ともよぎってまうのだが

作品に対しての信頼感が高いから、

このスタッフ陣がこの演出で出して来たという事は素直に

「信用して良い/間違いないのだろう」

「今感じている以上のタレント(才能)を持っているのだろう」という

伸び代も感じて、面白い新人が入ってきたと皆ワクワクしたと思う。

まぁ、現実的には制作側のゴリ押し等は、根強いファンであるほど敏感に反応して

時としてそれが逆境や障壁にもなってしまい

マーリーの場合も、そこは苦悩することになるのだが。

ブロードウェイで活躍を夢見るレイチェルに対し

POPアーティストとしての、中の人としてのソロ歌手デビューも

視野に入れていたことが伝わって来る。

SUPERGIRL』主役に抜擢され、立ち消えになったか。

これをどう受け取るかはそれぞれだが、この曲は制作人による

レイチェルのNY / マーリーのグリークラブの物語は

ここから始まるのだという決意表明のファンファーレである。

さぁ物語は続いていく、主人公はキミだ、と。

と言う事で、今回は2024年の年間ベスト上位曲

『glee』に観る「New York State of Mind」作品レビューでした。

24年ベスト曲としてgleeでもう1曲レビューしたい曲があり長文の為分けているので

次回のベスト曲、glee第2弾記事もお楽しみに。

I`m in a New York State of mind, yeah !!

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