シャッフルレビュー第94弾。
今回選ばれたのはこの曲
早瀬優香子「サルトルで眠れない」
・作詞 秋元康 ・作曲桐ヶ谷仁 ・編曲 西平彰
1986年1月25日にデビューSg。AL『躁鬱 SO・UTSU』と同時発売。
カルト・シンガー(!!)野崎沙穂の85年のAL曲のカバー。
サルトルの哲学に触れながら、長い長い眠れぬ夜が続く迷宮曲(☆2.7)
今回レビュー曲に選び、多分7,8年振りに聴いたので自分でも新鮮だったが
記事を書くまでカバー曲だったとは知らなかった。
それ位、彼女にピッタリな世界観の曲だと思う。
ともかく彼女の歌声がクセになる。
道重さゆみのキャンキャン、三浦理恵子のニャンニャン系とも違くて
Sweetな甘いだけじゃなくて、空気感を含んだメレンゲ感というか…(語彙力)
これだ、キャラメルホイップ VOICE !!
甘い歌声もそうなのだが、反面にその仮面の下の狂気も見え隠れするようで
無意識に戸川純を感じてしまうのは自分だけだろうか。
UAが彼女のファンと言うのは聞いた事があるが
他にも業界内(特に声フェチ界の方々)にも隠れファンが多そうだ。
オリジナルの野崎さんのすぐ翌年のカバーなので
恐らく野崎さんの音楽が思ったより跳ねずヤキモキの所に
早瀬さんの歌声に巡り合って
秋元さん周辺の関係者がこの曲を埋もらすには惜しいと
(カバーというより、仕切り直しのあくまでリメイク・新曲のニュアンスで)
「サルトル~」をゴリ押ししたって事なのだろう(あくまでも個人の推測)
結果として凄い化学反応が起きたので、「サルトル~」愛のスタッフの勝利だと思う。
昨今のシティポップに入れても良い気がするが、
国内の評価の割にあまり海外で彼女の曲は取り上げられない気がする。
海外の方こそこの歌声好まれそうだが、曲も含めてアクが強すぎる?
ある種の脳内ドラッグ要素はあると思うので、
輸出禁止の自主規制してると思う事にしよう。
漂うハニトラ感とミスマッチなビジュアル
彼女は女優でもあるのだが、勝手にこんな役のイメージがある。
ドラマ内で、好きな女の子がピンポーンと茶色い紙袋を両手に抱えて訪ねて来る。
そこに部屋の奥から突然の雨に濡れてシャワーを貸してあげていた
職場の同僚の女が髪を乾かしながら出てくる。
女の子がバさっと紙袋落として、リンゴやレモンが転がり
「信じらんない・・・もう、勝手にして!!」と飛び出してく。
呑気に髪を拭きながら「あれ?私なんかお邪魔しちゃった??じゃあ帰るね♡」(帰り身支度は異様に素早い)
みたいな、ハニトラ伏線女キャラの印象が。
いや、実際にそんな役が合ったかどうか知らないがあくまでもイメージの話。(少なくとも中山美穂主演ドラマ『若奥様は腕まくり』のOL役でもこんな感じだった様な記憶)
魔性の女まで行くと行き過ぎなんだけど、色気のある危なげOLが似合うという印象。
あと、歌声だけだともっとブリブリアイドルチックか、
アダルトっぽい雰囲気してそうなのが
久宝留理子みたいなこざっぱり感あるミスマッチなビジュアルが、
戦略なのか、彼女の好みなのか不明だが
本来の早瀬さんはどんな方なのだろう。
サルトルって!?
おそらく社会の歴史で習ったハズだが、自分の中では長いこと
『やっぱり猫が好き』で、”さるとるちょ”の本のワードが出るのだが
その語感位しか浮かばなかった。かいつまんで簡単に触れると・・・
ジャン=ポール・サルトル は20世紀のフランスの小説家であり哲学者。
その目的や意味(本質)よりも、いま目の前に存在している現実が勝るという”実存主義“を定義した。
彼の思想の一つでは、他者から見られる事で自己が形作られていくと考えられていた。
これは「男/女なんだから~すべき」「○○歳なんだから~しないと」等の
他者からの発言やどう見られるかという評価や視点が自分の形を作ってしまうと。
現代でも指摘されている問題点にも警笛を鳴らしていたのですね。
その問題に対し「他者⇒自分」という視点を「自分⇒他者」に転換して
自らが能動的にその評価の内部に入り込んで溶解していく等
対抗策も挙げていた。
また”人間は自由の刑に処されている“という思想も伝えていた。
人は人生において、常に何かを選択していく。
自由でありたい、自由を得たい ≒ その為にどうするべきか考え、行動する。
その時点で、人は自由という刑に縛られてしまっているのだと。
その”自由”という認識に切り込みを入れられ
思わず、はっとさせられてしまう。
他にも自由恋愛にも取り組んでいた。
当時のフランスでは一度結婚すると離婚というものが困難だった為
お互いのリスク回避の為に結婚をせずに、2年毎の恋愛契約をしていた様で
ある意味先進的な面もあった人物だった。
長くなってしまったが、ともかくサルトルは
現代にも通じる普遍的な哲学を唱えており
当時から多くの人々に支持され、愛されて来た気鋭の哲学者という事です。
サルトルで眠れないは
女子大学生の主人公が、サルトルの哲学について論文を書いており
その複雑だけど惹かれる思想世界にトリップした精神と、
実体としての疲労した肉体の元でまどろんで
いつの間にか恋人と愛し合う2人は何だか
サルトルの哲学の様に奥が深くて夢中だわ、あぁ眠れない という事か(!?)
ここで、もう1曲。彼女を好きになったきっかけの曲をご紹介。
「セシルはセシル」
・作詞 秋元康 ・作曲 MAYUMI
1st AL『躁鬱 SO・UTSU』収録曲。
甘い歌声で紡がれる洋物メルヘンミディアム曲。
かつて安藤裕子による「セシルはセシル」カバーにハマった事で
早瀬さんの音楽に触れる事が出来たので
是非この曲は安藤版で紹介したい。
セシルはセシル (安藤裕子Official Channel)
テンポが少しせわしなくスリリングな感じの早瀬オリジナル版も勿論良いが
この曲に関しては思い入れもあるし、アレンジ、歌唱も含めてアンドリュー版の方が好きだ。
と言う事で今回は
早瀬優香子「サルトルで眠れない」「セシルはセシル」楽曲レビューでした。
今回触れたサルトルの哲学も自分としても興味を惹かれるものでした。
関心がある方は是非、深く触れてみて下さい。
次回もお楽しみに。
サルトルDE 眠れないHA・・・zzz