小泉今日子「大事な気持ち」レビュー 深夜の恋文は 国境越える子守唄

シャッフルレビュー特別篇。

筆者が2018年に聴いた楽曲の中から選ぶ、第2位はこの曲。

小泉今日子「大事な気持ち」

・作詞 小泉今日子、菅野よう子 ・作曲 菅野よう子

1996年11月21日発売のAL『オトコのコ オンナのコ』収録曲。

大事な気持ち

大事な人への想いが、綴られている。

ピアノ1本のシンプルなバラード曲。(☆4.5)

正確には後半でストリングスが、気持ち程度入ってきますがピアノ曲と言って良いでしょう。

華原朋美「MOONLIGHT」(96)の表現をもっと大人っぽく、現代的にした雰囲気?

あと鈴木あみin my diary」(99)も近いものがあると思います、それらが好きな方ならば気に入るかもしれません。

派手さはないけれど、時代に左右されない長く聴ける曲だと思います。

曲の雰囲気としては優しいのだが、ピアノのメロディーが物悲しくも癒される。

詩で語られている事自体は、なんてことない日々の中の心の情景なのですが、

彼女の歌と語りによって、ドラマチックに優しく切なく響いてきます。

またこの曲は、歌とセリフがあるのですが

両方がパート毎に独立している感じではなく、自然と混ざり合って進んでいくのが最高です。

歌とセリフという意味では、普通のPOPSというよりも”ミュージカル的”と言えるのかもしれませんが、

ミュージカルは、個人や集団の想いや感情を、歌やセリフでオーディエンスに向けて放出するイメージで。

この曲の場合は、あくまでも個人と個人の、(ささやかだけど好きな)感情のやり取りの印象で、

例えるならばキョンキョンと”文通“しているというイメージの曲ですね。

いや、詩の中でハッキリと(国際)電話というフレーズが出てくるし

それで間違いないのですが、会話しているハズなのに主人公が、本当に言いたいことを言えないのもあってか、どこか一方通行的に感じます。

それもあってか、アナログ的な行ったり来たりな感情のキャッチボール感が

瞬時(リアルタイム)に相手と意思疎通する電話(それこそメールでも)より

“文通”「手紙」というアナログ、ぬくもり感がしっくりくる気がします。(強いて言えば電話にしても留守番電話っぽい世界観)

歌い方も優しくて、曲調もゆったりだから、気付きにくいと思うのですが、

これ実際に歌う(かつ心地良い空気感を出す)となるとかなり難しい曲だと思うんですよね。

そこは女優、歌手活動共に経験も豊富な小泉さん、歌は安心して聴けるし、語りも見事なんですよね、

感情の起伏も出し過ぎず、薄過ぎず。

実際は不明ですが、特に語りの部分は譜割りは何小節~小節迄の間とかで決められてて、

後は彼女の感覚で任されてると思うので、その辺りのバランス感覚も絶妙だなと思いました。

キョンキョンに、キュンキュン!?

1曲を通してだと大人の女性という感じなのですが、曲の端辺をひろっていくと

若干心配性というか「構ってちゃん」ぽさもあったり、非常に可愛らしい女性像も見て取れます。

そんな彼女の側面にいわゆる「萌え」というより、「ぼえー」(絶対違う^^;)としてしまう。

そして曲中で、リスナーにすごく近い距離感で、胸の内を伝えてくれるから

そっちはどうですか?」など自分に尋ねられている様でドキッとするし、無礼なのは承知の上で妄想の中の彼女(小泉)と交流しているような シンクロ感も持ち合わせていますね。

だけど、彼女の柑橘系パーソナリティーのおかげか、甘くなり過ぎないのが、いいバランスだなーと思います。

仕事で疲れた時、寝る前などに聴くと、カラ元気ではなく「よし明日も頑張ろう」と、しみじみ思える楽曲だと思います。

伝えたいことと、大きな優しさが時を超える

日常的なことはどんどん口から言えるのに、本当に伝えたい

早く帰ってきて」が言えない。

それは、消極的な自分の「弱さ」から言えないわけじゃなくて

遠くの彼の仕事や目的を理解して応援しているからこそ、

彼への余計な負担をかけたくないという「優しさ」から言えない、言わないのだという事でしょう。

と同時に、その優しさに大きな母性も感じます。

そういう意味では、表向きは恋人へのメッセージかもしれないけれど

岩井俊二監督Love letter』(95)の世界観じゃないですが

今はこの世界を離れてもう会えない両親だったり、大切な人へ

(帰ってきてとは言えない、けど)またいつか会いたいな

ありがとう、これからもよろしく、心配しないでね、頑張るね…等、色んな意味を含めた

そっちは元気ですか?

なんだという解釈にも広げられます。

また、大人の世代が子供の頃に体感し、今となっては幻の様で、

でも確かに聴いた、存在した暖かい子守唄、ベッドタイムストーリーの体験を再び。

そんな思い出の、優しく暖かなリバイバル・メッセージとしても聴けるのかなと思います。

そういう意味では最高の子守り唄かもしれない。

この曲は今後も一生聴ける曲だと思っています。

「大事な気持ち」イメージイラスト

この曲をイメージして、ジャケットを描いてみました。

こちらです。

イメージは、曲そのままですが夜空に恋人を浮かべ、その映像と会話する女性。そして日常のふとしたドラマ性。

背景色は、何となくハマらない感もありつつ、ずっとグリーンカラーでしたが、

この曲の夜空と少女性・・・やはりロマンスブルーだと、最後の最後に青に変えました。

今回は小泉今日子「大事な気持ち」楽曲レビューでした。

次回は、さらにマニアックな2018年の1位曲の発表です。

お楽しみに。

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