シャッフルレビュー第97弾。
今回選んだのはこの曲
※今回紹介する2曲はご自身の体調に合わせてお聞き下さい
Portishead – Glory Box
1994年発売のAL「Dummy」収録曲。翌年Sgカットされた。
ISAAC HAYES(アイザック・ヘイズ)「IKE’S RAP」のサンプリング音も
美しくも奇怪に響くダウナー系TRIP HOP(☆3.4)
か弱く気だるく重くて消えそうで、不健全でも品格を感じる
ダウナー系POPSでも非常に聴きやすい曲だと思う。
Aメロの歌声のカッコ良さは音楽史に残ると思われ。
シックかつミステリアスな雰囲気で
思わず現実の隙間にある虚構の闇の空間・ポケットに
惹き込まれる様な楽曲の魅力。大人は勿論
一部のティーンエイジャー達にも堪らない世界観ではないだろうか。
派手さが無い分、疲れも飽きもない。
個人的にも長く付き合えている楽曲でもある。
いわゆるこのバンドは、リスナーへの内面へのプラス・マイナス両面での影響力、
メンタルダメージが危惧される「自殺系アーティスト」として称されることが多い。
皮肉にもVoのベス自身、このALの大ヒットの反響により
メンタル面でも体調を崩してしまい
次の2nd ALまで3年空いてしまったエピソードもある。
本曲はSg作でもあり、POPSに近いラインにあるので大丈夫と思われるが
調子の優れない時は彼らの作品に触れるのは注意したいところ。
高二病映画の金字塔とも言える
キューブリックの『時計じかけのオレンジ』辺りも似た芸術性を感じるが
エンタメ作品においてヨーロッパの中でも特にイギリス(UK)の色には
日本のホラーのジメっと感とはまた違う、牢獄っぽいサスペンス風味というか
独特の重苦しい空気感・ルーツがあるなと思う。
Portisの音楽にもそんなUKの空気感もふんだんに含まれている様に思う。
AL『Dummy』の恐怖
この曲が収録されているAL『Dummy』の
CDジャケットがチビリそうになる位不気味なのだ。
サーカスの1シーンにも見えなくもないが
人体実験された遺体が天井から吊り下げられてる(若しくは車椅子)みたいな。
しかもそれがピンボケになってるので、それが誰で、一体どういう状況なのか
想像を掻き立てられ、見る度2度ゾッとする。
AL購入者レビューで「夜に聴くと異空間に吸い込まれて戻ってこれなくなる」系コメント郡も
警戒心とより一層の聴きたい衝動に追い打ちを掛けたが
(amazonで”埋葬行進曲”なんてレビューもあったり、現在に於いても世界中でハマる方には凄まじく支持されているAL作品ですね)
以前Coccoの「カウントダウン」の記事でも触れていたが
Cocco「カウントダウン」レビュー 好奇心で聴いてはいけない歌 ブーゲンビリア
Sgで興味を持ち、ALを気軽に聴いて痛い目を見た事があったので
AL『Dummy』は数年間我慢してから
当時国内盤、複数の輸入盤のバリエーションを比べて購入した。
結果として「あれっ?普通に聴けるじゃん」と少し肩透かし感もあったが
それと同時に、敢えて何度も聞き返す事も無かったと思う。
他のAL作品も一通り音源は揃えたがプレイリストに入れたのはこの曲(LIVE Ver含)と
「All Mine」(これもSg曲)位で。ALは聴き込めばまた違う付き合い方が出来たかもだし
熱心なPortisファンからは、にわかだと思われてしまうかもしれないが
自分にとってはこれくらいの距離感が正解かなとも思う。
ほぼ無防備で聴いたCoccoの時と違い、Portisの場合は追い込まれるかもしれないと
身構えた状態で彼らの音楽に対峙したので平穏を保てた面もあると思う。
そう言えば彼らの音楽が「踊れないダンス音楽」と言われていたこともあって
弄れている自分は、当時この曲聴いてよく踊っていた記憶が。
また、この曲は日本でもCM曲として流れていた。
Levi’sのCMソングだった
96年前後だと思うのですが
日本でもリーバイスのCM曲として使用されていた。
少年が学校で大人の世界を垣間見るような怪しい雰囲気のCMだった。
当時ゴールデンタイムでも流れていたので見た事ある方も多いと思われる。
商品を前面に押し出すのではなく、間接的に演出。
編集も劇場ライクで、なかなか攻めたCMだった。
同じ様な方も多いと思うが、当時自分もこのCMを見て耳に焼きついた。
そこから数年も曲名もアーティスト名も分からぬままだった分
たどり着いた時の感動と愛着は強く残った。
意図不明カオスなPV
※PVの世界観が好きな方はこのブロックだけスキップするのをお勧めします。
(もしかすると日本人(いや自分?)にしか感じない感覚かもしれないが)
PVを見る度に、曲と映像の世界観のギャップにカオスを感じる。
前述した様に、おどろおどろしい作品背景があるにも関わらず
PVの独特なUK映像の質感に、どうしてもコメディ色を感じてしまうのだ。
「空飛ぶモンティ・パイソン」とか「Mr.ビーン」とかのTVコメディの印象か?
(日本で言えば「カトちゃんケンちゃんご機嫌テレビ」とかの雰囲気)
このシットコムの笑い声が聞こえてきそう感は一体・・・
そしてPVの主人公らしき金髪サラリーマン、
というか映像に出てくるバンド以外の男性陣が
女性が男装してる様に見えてしまう。
それ自体が良い悪いとかでは無くて
もしそうだとしても、そこに何の意図があるかも不明だ。
しかも凄まじい伏線のある、恐ろしいストーリーに見せかけて
見せかけっぽい浅い感じが何とも言えない。
曲は好きなのは変わらないし、曲は曲、映像は映像だ。
かといって正解を知りたいとも思わないし
深追いせず、ミステリーな雰囲気を表面だけサラッと
楽しむのが良いのだろうなという感じ。
ただ冒頭のモノクロの雰囲気はこの曲の怪しい雰囲気バッチシハマってるので
全編モノクロだったら全然違う印象だったかもしれない。
が、3年後に出たSg「All Mine」のPVは見事に全編モノクロだし
より病的な世界観ではあるのに、やはりモンティ・パイソン感が抜けない。
エフェクトとかじゃなくて、お国柄の撮影機材の質感の問題なんだろうな。
愚痴っている様になってしまったが、
楽曲愛ある故だと思って読み流して欲しい。
そして近年「Glory Box」の世界を感じた曲に出会った。
それがI Monsterの「Daydream in Blue」だ。
I Monster「Daydream in Blue」
2003年発売のAL『Neveroddoreven』収録曲。
電子音が怪しく響き渡るサイケなホラーPOPS。
「Glory Box」よりもだいぶサイケだしPOPs寄りで
パッと見の印象はこっちの方が分かり易い世界観だろうと思う。
この曲に惚れて配信でAL購入し、一時期鬼の様にリピートしていて(確認したら300回数以上超えだ)
聴く度に「Glory Box」の空気を感じていた。
曲かグループに関連性があるのかと思ったら、特に無さそうだったが
後追いでPV見たらまさに映像の質感に「お主もUKの者か!」と
感じていた兄弟感もあながち的外れでも無さげで少し安心?した。
と言う事で、Portis head「Glory Box」、
I Monster「Daydream in Blue」楽曲レビューでした。
今回紹介した2曲はダウナーPOPSとしてもかなり聴きやすい曲でしたが
AL曲や他のSg曲等含めて、彼らの曲はメンタルに響きやすい面もあると思うので
体調が悪かったり、精神が不安定な時などは聴くのを避けたりと
その時その時、ご自身に合わせた作品に触れて欲しいなと思います。
ちなみに「Glory Box」はサイト開設当初から何度もレビュー候補に出てきては見送った曲で
今回ようやく実現したので感慨深いものがあります。
次回からはしばらく、24年のベスト上位曲のレビューを複数回にかけて
アップしていけたらと考えています。
DEHA