浜崎あゆみ30万CD戦略-4章SURREAL「Mの追撃 終われないDuty 世代征服」

続きを待っていた方々、長らくお待たせしまいすみません。

この記事は以下の浜崎あゆみ30万枚限定~コラムシリーズの最新章です。

浜崎あゆみ30万枚限定CD戦略-コラム1章appears「時代を読むセンス」

浜崎あゆみ30万枚限定CD戦略-2章Kanariya「globeを通して見る現実」

浜崎あゆみ30万枚CD戦略-3章Fly High「リカット主義 Max松浦勝人の狙い」

※本記事は2017年当時のお蔵入り記事に追加修正を加えたものです。

本コラムシリーズに記載されている内容はデータ以外は筆者の推測によるものであり、過激な表現もありますが、あくまでもいち企業の商品戦略に対しての比喩であり、特定の個人に対する批判の意図はありませんのご了承下さい。

また、Sg「SURREAL」は正確には30万枚限定盤ではありませんが、同等の位置付けとして取り上げています。

2000年。ALで天下取り、のハズが

98年に華原朋美の背中を追い、

99年夏にはmaxiの特性を生かした”Remix戦略”で

安室、ELT、globeをはじめavex社内でもセールスTOPポジションに立ち、

着々と女性ソロのTOPへと上り詰めていった。

しかしそれは、もはや本人の夢や意識とは離れた

一企業の社運を背負った”浜崎あゆみ“という巨大プロジェクトの企業目標となっていた。

そして戦略も大詰め、残る対女性ソロ歌手は宇多田ヒカルに絞られた(翌2001年、あの有名な『DISTANCE』vs『A BEST』の決戦に繋がるがこれはまた別のお話)

・・・はずだったのだ。

2000年早々に、浜崎あゆみプロジェクトに想定外の使者が迫っていた。

本音は『Duty』で、方向転換したかった?

2000年9月に発売された3rd AL『Duty』は

現在においてもファンからも高い支持を受けている1枚だ。

彼女の作品群でも1枚のALとしての流れや完成度は最高峰に感じるものがあった。

重たい世界観を纏いつつも、丁寧な作り手の愛を感じる1枚だと思う。

筆者個人としては9月にAL発売と聴いた時に、どんな豪華仕様で来るのだろうか?

Sgは勿論別Verだろうし、今回もリカットも1~2枚はあるだろうし

「ever free」の完全版も収録されるだろう!隠しトラックは!?と

どんな驚きの仕掛けで来るのかと息巻いて期待していたが

実際にはSg曲はRemix(リカットの「AUDIENCE」を除く)無し

全12曲でシークレットトラックや、初回盤すら無し。

1枚のCD onlyで中身で勝負に出てきた印象だ。

(その代わりにショップ店頭でAL購入者に向けてポスター等のグッズが当たる抽選BOXクジ施策が始まった)

豹ジャケットのインパクトに騙されそうだが、前作『LOVEppears』と対極な直球勝負で渋い内容。

このALの形式は、これまでやって来た戦略をavex自ら否定するようなやり方だった。

一種のドーピングとも言える、Remix戦略や数量限定戦略も

続ければ続けるほど止めた時、ハズした際の反動も大きくなり、

利益率で考えても、まさしく身を削りながらの戦略で

止めるタイミングを探っていたハズだ。

昔からアイドル系女性歌手の市場期限は3年という目安もあるが、まさに歌手デビュー3年目だった浜崎。

Sg「vogue」のインタビュー時と思うが”時期が来たらパッとこの世界(業界)から身を引きたい”と言う様な考えも自ら発していた。

世間から見た本当の自分とのギャップや、恋人や親しい人物との別れなどが絶望3部作(+ever free)に投影されたとも言われている。

そして「Duty」の世代交代と終幕の予兆の詩の世界。

『Duty』を300万以上売って年間TOPを飾ると共に

過剰な赤字覚悟の特典やRemix戦略等もここで綺麗に終わらせたいと

松浦氏はここで歌手浜崎のピークアウトを打ち出したかったのかもしれない。

生き急ぐ様に日々を過ごして来た彼女へのひとつの到達点。

それは音楽人としての松浦氏が歌手デビュー当初から目指していた

アーティスト浜崎あゆみとしての金字塔となる代表作を残すこと。

それは一種のドクターストップを兼ねた松浦氏からの卒業ALの様な作品。

彼女としても孤独や闇を抱えた”初期浜崎あゆみ”の集大成がAL『Duty』に込められているように感じる。

2人の事は当人にしか分からないが、こうしたひとつの到達点が

『Duty』の普遍的な作品性に現れて世に出されたのではないだろうか。

しかし、現実にはTOPに登り詰めるにはまだ予断を許さない状況は続き、

気が付けば”浜崎あゆみ“は企業の存続の為にも止めてはならないプロジェクトになっていた。

結果としてこれらの戦略(ドーピング)も止める事は許されず、身を削りながら続けていく事になる。

(同時にその後の活動継続にも大きく関与したであろう”LIVE活動”の始動が彼女にとって新たな居場所の一つになった事は大きな転換点であり救いにも思う)

そして「Duty」が「DUTY」になる事が許されなかった。そこには

ある一人の新人女性アーティストの台頭も大きく影響していたかもしれない。

翌2000年の女性ソロSg年間ランキングを見ると

この年の浜崎の最高セールスSgは「SEASONS」で約136万枚。

宇多田ヒカルWait & See~リスク~」約166万枚に1歩差をつけられたのは仕方がない。

それよりもavexとしては想定外だったのが、倉木麻衣の登場だ。

想定外の追撃者”Mai-K”現る

99年12月1位を飾ったSg「Kanariya」と同日リリースされた

倉木麻衣の1st Sg「Love, Day After Tomorrow」は約138万枚で

2000年の年間チャートで常に「SEASONS」の上に君臨していたのだ。

前年、鈴木あみ『SA』(約180万)と『A Song for xx(ロングセールスで約145万枚迄伸ばしたが)屈辱も

2nd『LOVEppears』で約250万枚まで売上げ、リベンジ成功した直後のことだった。

今度は2000年6月に発売した倉木麻衣の1stAL『delicious way』が300万枚を有に優に超えるセールスで、既に年間ALチャート1位を独走。

浜崎が狙っていた、というより半分座りかけていた新たな歌姫ポジションが

(セールスだけ見たら)すっかり新人倉木に追い抜かれていた。

「宇多田 VS 浜崎」のはずが、音楽市場の空気は「宇多田 VS 倉木」に変化していたのだ。

(avexが宇多田の『DISTANCE』に『A BEST』をぶつけたのも、「世間の皆さん、(パンパンッ)そろそろ目を覚ましてくださいねー、本当の戦いはこっちですからね」と改めて示したかったのもあると思う)

倉木は宇多田以上に歌番組含めメディアには一切露出しない戦略だった為、

ガッツリメディアを攻めていた浜崎自身はあまり意識していなかった気もするが

avexにとっては、まさに倉木麻衣は目の上の何とやらでしたでしょう。

このチャートアクションにavexサイドは相当神経質になったと思われ。

Being宇多田フォーマットを応用した倉木に続き、2000年には浜崎フォーマットを応用した愛内里菜デビューさせたりと抜かりなかった)

想定外のライバル出現だったが、累計で250万迄伸びた『LOVEppears』を踏まえると

宇多田の700万枚に比べ、今回の300万(累計では約350万枚)の倉木が相手だったら、

まだアルバム部門でのTOPも不可能ではない状況だった。

そんな流れの中リリースを控えていた勝負作の3rd AL『Duty』には、

avexとしても様々な思いが込められていただろう。

対倉木戦略“と思わしき断片も見て取れる。

『delicious way』を攻略せよ

AL『Duty』と同時発売のSg「SURREAL」。

当時このSgに違和感を持ったリスナーも多いのではないか。

本曲のRemixはゼロでインストがあるのみで、他に「SEASONS」のremix1曲以外は、

全てALタイトル曲「Duty」のRemixで埋め尽くされた。

リミックス戦略が始まった「Boys ~」以降のSgで、表題曲以外のRemixがメインになるのは初の事だった。(約1年半後、この戦略のラストSg「Daybreak」でも再び似た傾向が見られた)

この事からも当初は同時発売のAL『Duty』とSg「Duty(もしくはSg向けRemixされた”DUTY”名義)

同名タイトルでのAL・Sg同時一位を狙っていた名残りだと思われ。

(Sg盤のCDジャケットのカラーが「金と銀」の対比なのはそうとして、もう1歩捻りがないのがらしくないなと思ったたが「SURREAL」用のジャケット撮影や特殊仕様までは難しかったか)

曲としての「Duty」は、世代征服感もある重厚な世界観でALのOPにもピッタリだった。

もしSgで出していたら、Sgらしくないところも王者としての余裕と貫禄になり

ピンポイントで若者世代に強力なALアピールにはなっただろう。

しかしSgにするにはマニアックで渋すぎる曲調と世界観。同発(先行)Sgなので、

出演ラッシュとなる各歌番組へのメディア向け曲としても扱いの難しい曲調だった。

2000年上半期の女性ソロAL部門の上位は

1月発売MISIA「LOVE IS THE MESSAGE」約220万

3月発売椎名林檎「勝訴ストリップ」約231万、

この2組も確かに強力ではあったが

まだここまでだったら『LOVEppears』(約250万枚)の実績もあった為、

9月の同発Sgも「DUTY」で公算をかけていたのではないだろうか。

テコ入れとなった一番の要因は6月発売の大本命Sg「SEASONS」のセールスが

倉木に抑えられてしまった事や、同月発売AL『delicious way』の300万越えの確変ヒットが意識されたハズだ。

もはやSg「DUTY」で世界観重視などと言っている余裕が無くなった。

「SURREAL」は、倉木麻衣『delicious way』に立ち向かうべく手配された

攻撃手段だったといえるかもしれない。

戦略変更を迫られたavexとしてのダメ押しが

攻撃性とキレある歌詞に一般向けPOPSとしても勝負できる「SURREAL」をSg「DUTY」と差し替え、

Sgでは初とも言える、共感性に訴えるアイドルPOPな「AUDIENCE」の追加でAL全体の重たい世界観の調整とライトユーザーへの配慮を測ったのだと思う。

結果的に彼女のオリジナルALとしては歴代1位のセールスで

前作から40万枚アップの約290万枚の売上となったが

正直『delicious way』の事が頭にチラついてしまうが、十分に素晴らしい記録だ。

「AUDIENCE」は分からないが、「SURREAL」が投入されていなかったらもう少し下回っていただろう。

中身で正々堂々と勝負した290万枚は価値のある数字以上の価値があると思うし

この悔しさが、浜崎プロジェクトを再び動かしていったのだと思う。

30万⇒初回生産限定盤への変更

当時『AYUMIX II』『ayu-ro mix』などRemixアルバムや、絶望3部作のヒットなどの音楽面での成功だけでなく、

CMや雑誌、ファッションアイコンとしての若者からの支持、

初のツアーも行うなど彼女にとって第1次円熟期を迎える最中のリリース。

注目される3rd AL『Duty』と同時リリースのSg「SURREAL」

仮にSgが30万枚限定「DUTY」だったら、この当時の勢い+avexマジックがあれば、20万代には乗せてきただろうが、代わりに次以降の作品(「AUDIENCE」や「M」)のセールスで売上低下の反動が出てしまったはず。

Sg「SURREAL」ならば、当時の浜崎の追い風にもマッチしており

初期浜崎のキレキレの歌詞とロックで男子/女子ともに狙えて

もうひと盛り上がりしてくれる様な期待感や勢いやスリルもあった。

この曲は当時の彼女と時代の空気感が見事にパッケージングされたSg曲だなと思う。

この曲調とタイミングでこれまでの様に30万枚限定だと、

商機を大きく逃してしまう感は傍から見ても確かにあった。

vogue(累計76万枚)、Far away(累計51万)、SASONS(累計136万)の流れを見て

例えばこれを単純に“40万枚限定”と微妙に増やすのもリアル過ぎてイヤラシイと考えたのか、

「SURREAL」は初めて”初回限定生産“名義でリリースされました。(これなら実際の生産数に振り幅を持たせた上でリスクも減らせる)

今回の「SURREAL」の力だったら40万枚限定でも売り切れたと思うが、ディナーショーの価格などと同じで一度数字を上げてしまったら下げることはイメージ含めて難しいので

予定していた「AUDIENCE」リカット含め今後を考えると出来なかったのが本音かと。

ちなみに「SURREAL」のPV制作費が、当時avexの最高額だったglobe「Is this love」を上回って歴代1番になったと話題になったが、

ヘリも使った屋外ロケに、戦艦?まで手配(使いこなせて無くて勿体無い感)

スタジオでの豹あゆシーンやリゾート風セット。まあ確かに豪華ではありますが、

歴代1位と言うのが少し引っかかった。

楽曲差し替えは出来ても、MVに関しては海外ロケのスケジュールまで組んで簡単に変更も出来ないので、当初予定されていた「DUTY」MV撮影のコンセプトやシーンを流用したのではないかと思われ(実際SURREAL MVを0.8倍速位にして、Dutyを聴いてもほとんど違和感がない)

とはいえ急遽「SURREAL」に差し替えられたとしたら、監督としての構想や意地もあるでしょうし、変更点やアレンジを迫られた結果、浜崎本人は勿論だが急な制作スタッフ陣の再編・移動・労働の追加や変更、近々の過密スケジュールで更にかさ増しとなり結果としてMV予算にも計上されたのではないか。もちろんこれらはあくまでも推測であるが。

これだけ広大なスケールでのロケを行ったのにも関わらず、PVとしての目玉は”スタジオで撮られた浜崎と豹あゆが出会うシーン”と言うのが何とも皮肉だ。

「SURREAL」初週30万、累計41万枚から見えてくること

忘れられないのがこの「SURREAL」はオリコンウィークリーの

初週ギリギリ30万を越えた数値に、会社としての意地というかoricon側の配慮というか。

リアルな数値だったのかもしれないが、当時ファンながら複雑な気持ちになった。

30万限定の形を変えたのに、例えば20万前後の数字だとしたら「これまで通りで足りてたじゃん」と

意識過剰さや戦略ミスの印象を世間に見せてしまう(フォローするなら当時の音楽マーケットでプラマイ10万枚位は誤差で仕方ないと思うが)

ギリギリでも30万枚を超えれば「ほら、今回限定生産にしといて正解だったでしょう(ふぅ・・・)で、でも一応次はまた30万枚に戻しときますね!」となんとかメンツを保てる。

avexがコピーコントロールCD化への引導で、説得力を持たすためにもギリギリでミリオンセールスを突破させた「H」(2002)の時と似た感じか。(参考記事 浜崎あゆみ「HANABI」レビュー CCCDでミリオンの意味と 3和音の着メロ

後の宇多田との直接対決時の交互1位という配慮と思わしき動きもありましたが

恐らく会社間の大人の話し合いも有ったでしょう。これは批判ではなく、ヒットや時流を作る背景にはこうした裏の仕掛けや、連携、フォローも大切になってきますし、こうしたセールスバランスのアピールも立派なプロモの一つですからね。

結果的に「SURREAL」は累計で約41万枚を売り上げた

しかしこの辺りから、生産限定でも 発売週や翌週ですぐに在庫が無くなる と言う状況ではなかった。このSgも大手ショップでも数ヶ月は店頭に並んでいた。

緩やかに長期間掛けて最終的には店頭在庫も目立たなくなった感じの印象(年末か『A BEST』の年度末か忘れましたが、どこかの時期で不自然に見かけなくなったので、印象面など考慮して自○回収?と思った記憶もある)。

このSgは41万枚売れた様なので、実際の生産数が50万枚だったのか、もしくは6・・・だったの当時のスタッフ以外、誰にもわからないことですが。

今回は”初回生産限定“という名目で数値を伏せた

実質はavexがやりたかった”40万枚限定Sg“だったんじゃないかなと思っている。

そういう意味では会社としての読みは合っていたのか。

ただ、このSgからセールスの数字と、店頭で見掛ける実物たちとに徐々に違和感が見え始めてきたのは事実だった。

それは次のリカットSg「AUDIENCE」でより明確になってしまう。

次の5章では『Duty』からのリカットSg「AUDIENCE」と共に彼女が、音楽業界に与えた影響力についても考察します。

超長文ご覧頂きありがとうございます。これまで以上に読み難い部分も多かったと思いますが

修正、再編を繰り返し再びお蔵入りから永遠に抜け出せなくなりそうだった為アップしました。

分かりにくい部分は随時修正予定。5章の更新時期はひとまず未定です。