藤井風「青春病」レビュー 青春ていう永遠なんて 儚かったよね

シャッフルレビュー特別篇

今回は2022に聴いたベスト曲の第1位のレビューです。

藤井風「青春病」

・作詞 作曲 藤井風

2020年10月配信曲、12月11日デジタルリリース『青春病』EPタイトル曲(23年3月『LOVE ALL SERVE ALL』収録)

気が付けば儚くも眩しい 苦悩と充足、探求の日々を歌った楽曲。

 
ずっとロケは四国もしくは東南アジア?かなと思っていたが、今回沖縄だった事を知った。
 
タイムラグのある2022年のベストに選びつつ、
実際はリアルタイムでもYoutubeでPVを何度も見ていた。
 
Cメロの青春ダンスにハマってリピートしたり、
直後の柳楽優弥ぽい少年が、荷台から駆け出す定番良シーンから
スワロウテイルなファイヤーシーンも印象に残ってる。
 
基本藤井氏には福山雅治を感じる事が多いのだが
「青春病」、「へでもねーよ」配信アートワーク見た時に、
どこの竹内力だよと思ったのを覚えている。

ここまでハマって、カバー曲にも惹かれながら素直に買っとけな感じなんですが

1st ALと同様2nd AL発売時に全部収録されると思い、一切ダウンロードしなかった
金銭ではなく時間と精神的充足面での損失を後悔。
 
そんな訳でAL発売を待っていたので(前回の「真夜中のメリーゴーランド」と同じく)
1年程ラグあり、2022年にヘビロテした曲となった。
 
 

どどめ色とは?

耳に残る”青春はどどめ色“というフレーズ。
“恋は水色”のオマージュぽいが
 
どどめ色とは、青あざの色のような広い定義を持つ様だ。
 
遊び心溢れる彼による、狙いというよりひねりの”ハズし” フレーズだろう。
 
健全的なスカイブルーでも真っ白でも、中二病的な暗闇や暗黒でも無く
綾小路きみまろ氏の漫談すら思い起こす
どどめいろ なんてマニアックワードをあえて選んだ意味を追求するならば
 
物理的にも内面的でもボコボコにできた沢山の青あざ。
プラスもマイナスも全ての出来事を体全身で全力でぶつかりながら
それらを糧に成長してきたという”青春”の象徴として表した様にも感じる。
 
Cメロの”切れど切れど纏わりつく~“パートの
混濁とした青春の苦悩がギュッと集約されてる感が好きだが、
このCメロこそが曲中で最も どどめ色しょく)が出ているパートだと思われ。
 
 

青春病って何だろう?

青春病は中二病的なメタファーワードだと思いますが。
きちんと曲の歌詞を読んだり、本人の解釈を見た訳でもないので
雰囲気で勝手にイメージすると
 
大人になってからも、キラキラした青春時代を思い出として認識できず(もしくは自発的)
自分の価値観や理想がずっとそこに固執してしまう症状のことだろうか。(大きく言えば過去に囚われる事とも言えるかもしれない)
 
そういう思いを抱いても、多くの人々はそれを
自分の子供や次の世代に伝えたり、成長を見届けたりする側に立ち
その儚い輝きを、自分以外の何かに変換して、間接的に昇華していく。
 
だけど、中には自分の中でしかその出口を出せない人も少なくないのではないか。
 
今の現状に納得できず、儚い眩しいあの頃の自分 最強・正義・至上主義となって
その思想からビッチリと離れなくなってしまうと
 
悔しさや悲しさを原動力に良いパワーを生み出せれば一番良いが
あの頃と比較して、ため息をついてしまったり、
取り戻そう、取り返したいと今の現状に向き合えずに
過去の自分の影を追い続けてしまう=現実逃避的な、
後ろ向きな印象を持たれがちな気もする。
 
かつての自分だとしても、そこに救いや希望を見出す事で
ブラックな環境や、ハラスメント、介護疲れなど
心身共に衰弱する中で自分自身の自我や理性を守るため/生きるための
防衛反応として無意識にこう捉えることで繋ぎ止めている側面もあると思うし
 
アートや映像、音楽等、感性が重要なアーティスト達にとっても、
この青春病の感受性は武器となる事も多いと思う。
 
 
だからこそ、この病を一概に良いも悪いも決め付ける事は出来ない。
 
是か非かは置いといて、程度にもよるが
現代社会では青春病の人たちは生きづらい場面も多そうだとは思う。
 
この「青春病」という楽曲も聴き方によって、
青春時代を慈しみノスタルジーを増幅させる側面もある。
 
とはいえ、ただ”青春病バンザイ!”と唄いたい訳ではないのも分かる
 
青春にサヨナラを“と自らそこから抜け出そうと鼓舞しているようにも聞こえる。
 
それは、特にラスサビの歌詞に集約されてると感じた。
 
「 青春のきらめきの中に
  永遠の光を見ないで 」
 
軽蔑でもなく、むしろその思想に共感し寄り添う側から。
 
それでも、あの青春の頃の自分の為にも
血や涙を流しながら、啜りながらでもいいから
勇気を出して、一歩ずつでも進んでいこうという
自らも含めた青春病患者たちに向けたメッセージに感じられハッとする。
 
 
一般的なTeenageの青春と言われる時期はあると思う。
それは、共通言語の指標として分かり易いからそうしているだけで
 
一律に何歳~何歳までなんて考える方がナンセンスだ。
 
成長の速度が一律でないように、
人それぞれにそれを取り巻く状況も環境も違うのだから、
もがいている時期も違えば、輝く時期も違うだろう。
 
物質的に捉える必要もないし、現実の青春に期限も回数制限もないはずだ。
 
無我夢中で一生懸命に何かに取り組んでいる時、
熱中出来る事に全身でぶつかっている時

人生の中で青春は何度もリバイブして訪れると思う。

だからこそ、彼は青春病の人たちにも、

過去の中にだけ青春や輝きがあるのではなく

進み続ける限り、何度も新たな青春やきらめきを生み出していこう、

生み出せるのだというメッセージにも取れると思うのだ。

そんな意味でも、この1曲の中で青春病の発症から、

患者としてもその病を謳歌しながら寄り添い

そして最後には処方箋までサポートするという

藤井風総合病院 青春科の様なメディカルエンターテイメント楽曲とも言えるだろう。

(上記で語る「青春病」の定義は、筆者独自の勝手な解釈ですのでご了承下さい)

成人病の grace

この「青春病」の正統進化版というのか

インターナショナル版な印象を持ったのが2022年に配信された「grace」だ。

藤井 風 – grace(Official Video)(Fujii Kaze)

 

青春病と比べると、人生を2歩くらい進んだ 悟りや導かれ感もあり、

そんな意味では”成人病“とも言っていいのかもしれない・・・いや違う意味も出てくるからなん嫌だ。

「青春病」MVも企画と制作に力を入れられたの伝わって来るが

ドキュメンタリーフィルムの様な構成自体は非常に似てる部分も多いが

「grace」MVの全体に漂うディズニーぽい上質セレブ感に嫉妬してしまう自分は

今後も青春病びいきの、青春病患者で有り続けるだろうと確信した。

と言う事で 今回は2022年に聴いた楽曲の中から1位に選んだ

藤井風「青春病」楽曲レビューでした。

次回は2022年のベスト楽曲まとめ編です。

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