カフカ『変身』レビュー 私が化け物になっても 本当に変わらない?

久々、本のレビューです。

今回はこちら。

フランツ・カフカ 作『変身』(原題Die Verwandlung)

世界的有名作のカフカの『変身』。これは邦題タイトルなのですが、ふと その字面(字体)がこの作品に非常に良く合ってるなと思いました。

例で言うと

✖ 少女が王女へ 変身 する(なんか違う)

  せがた三四郎が仮面□イダーV3に 変身 する(ハマる)

こんな感じで、”変身”というワードというか漢字は、変態性や変質性、昆虫っぽさ・土臭さ・男性がマッチする気がします。そう感じてから”変身”という漢字(字体)が、イナゴや蚕、昆虫にしか見えなくなってきた^^;

それではようやっと本題にいきます。(本レビューは、筆者の主観により書いますので、作品の本来の趣旨や意図とズレて読み取っている箇所もあると思いますのでご了承を)

あらすじ ※ネタバレ注意

主人公グレーゴルはセールスマンで、父親の破産による借金返済及び一家4人の経済を支えていた。ある朝彼は、巨大な毒虫の姿になっていた。

言語も通じぬその怪物の主をグレーゴルだと考えつつも、その姿に怯える家族。そんな醜い姿に”変身”してしまったグレーゴルは、仕事はもちろん家の自室から出ることもままならない日々。

妹は、怯えつつも毎日食事や身の回りのことを気にかけてくれる。家族を怯えさせないように、物音を立てないようにしたり、その体を布で覆い隠したり、気を使うものの、その姿の不気味さ故に家族との間には距離が置かれる。

大きく言うと、それまで頑張ってきた、いわば本来報われるべき主人公が、不可抗力のうちに見舞われた不幸により、やがて家族の擁護からも外されてしまうという、何とも報われない悲劇なのです。

ですが、最後に家族たちは「よし、新しい場所で新たな生活をはじめるぞ!」という希望に溢れる展開で終わるので、空気感が小ざっぱりとしていて、不思議と読み終えた時の後味の悪さはほとんどないです。他にも、主人公自身も驚愕や苦悩しつつも、どこかアウトサイダー的視点で語られている点も、その理由の一つだと思います。

最終的に、それまで頑張って支えてきた家族たちからも「早くあんな悪夢は忘れよう」という扱いにまでされてしまうほどの 立ち位置の変換は、ぞっとする部分もありつつも、その事態の深刻さが裏に見て取れます。

あとは、大事な家族だとは分かってはいるが、周囲が消耗してしまうという部分で、現代の介護などでも似たようなことがあるのかもと思いました。第三者から見ると「なんか可哀想だな」「もっとこうしてあげればいいのに」など、思うシーンはかなり有ると思います。もちろん施設などで問題となっているような、理屈の通らない様な不当な言動・暴力などは指摘、改善、解決しなければなりませんが。

少なくとも一般的な家族間においては、問題を抱えた当人たちは毎日毎時間のことで、その複雑な環境・状況の上での最善を尽くした上で、やりくりされたシーンのはずなので、あまり外野から掻き乱されると困惑する所ではあると思います。

シーンシーンで見れば介護する方・される方・関係ない人、どの立場の人でも時には60%、50%位の力で行動する時も当然あるはずです。それを、外部からピンポイントで切り取って、120%バリバリの正論・理屈で突っ込まれたら何も言えなくなってしまいますね。「お、おう」的な「まあ、そりゃもっとそうするに越したことはないですが・・・」と言わざるを得ないと思います。

実際その問題と向き合うのは当人達なので、ペース配分を無理して崩させてまで変えて、結果的に当人が「もう無理だ!!」というリタイア状態に陥っても、誰も責任を取りませんからね。デリケートな問題だと思います。良かれと思っても、言いすぎてお節介になりすぎない 線引きをしないといけないなと思いました。

そういう意味でも、このグレゴールの家族も、冷たいとは思えませんでした。強いて言えば、父親は距離感を感じるなとは思いましたが、それでも何ヶ月も、家で生かしていたわけなので、作中で直接は触れられてはいませんが、父としても「明日には、元のあの子に戻るかもしれない!」と願い続けていたはずです。そういう意味で、冷たさのうちにも光はあったのかなと思います。

そして、主人公の変身した”不気味な姿”というのが文章だけでしか表現されていないので気になります。カフカ自身、イメージの固定化を避けるためか、挿絵や具体的なイラストは避けていたようですが。

毎日のように世話をしていた妹でさえ、その姿にショックを受けてしまうのだから、何度見ても嫌悪感を感じてしまう姿なのは容易に想像できます。分かりやすく日本人的に言えば巨大Gとムカデの混血みたいな感じでしょうか。そう考えると、元は大事な家族と思っていても、やはり何度見ても見慣れないし、見るたびにゾッとしてしまうグレゴールの家族たちの心情も、ほんの少し分かるような気がします。

長くなってしまいましたが、努力をしてもひょんなハプニングが起これば、周囲の関係は一転とし、先を信じても報われる保証などないぞという作者のメッセージや、無慈悲さをストレートに受ける作品でした。

さて、作品をイメージしてジャケットを描いてみました。

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イメージとしては、血の繋がりをもってしても、形の繋がりが途切れた時の人間の恐怖、

「助けてくれ!」という叫びと、「助けたい」という支援は、時には水と油のように混ざり合わない卑屈さと。

そんな印象で描いてみました。

ということで、今回はフランツ・カフカ『変身』でした。

気になった方はチェックしてみて下さい。感想やリクエストなどもお待ちしています。

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