今回はシャッフルレビュー特別編。
個人的な2017年のアルバム部門の1位の紹介です。
1位に選んだのは、モーニング娘。’17『⑮Thank you, too』です。
年末発売の作品だったので、選考的には2018年扱いかなと迷いましたが、その1ヶ月の間でも十分に評価出来、またその後も数ヵ月様子を見て自分の中でOKだと判断しました。
AL全体的に曲のクオリティーも高いです(2nd、4thALに匹敵)。後半はややゴチャゴチャしますがボーナストラックとしてみれば有りです。
一押し曲は「What is LOVE? 2~逃した魚は大きいぞ・再び~」かと思ったほど、姉妹サウンドの「妄想女子の歌」ですね。おもちゃ箱感のあるアップテンポ・バラードである意味「涙ッチ」(10)の進化系かもしれません。
アイドルPOPが好きな方はもちろん、JPOP好きな方はチェックしてみて下さい。
1位を記念して、今回はそのALの中からこの曲をピックアップしてレビューしたいと思います。
モーニング娘。17「私のなんにもわかっちゃない」
・作詞作曲 つんく ・編曲 大久保薫
2017年12月6日発売のAL『⑮Thank you, too』に収録。
この曲は、もともと15(ワンファイブ)の頃から未発表楽曲としてLIVEで披露されていた曲で、
17(ワンセブン)のアルバム楽曲としてようやく初音源化です。(当時もレコーディングはされていた様で、この名残から、正式に鞘師のコーラスが採用されています)
この曲の肝は、繰り返されるAメロです。
エモクールで緊迫感もあり、いくつものトンネルを進んでいく様なスリル感もあります。
と、ここで
AL発売当時のTSUTAYAのフリーペーパーのAL記事に書かれていたライターの方のレビューが非常に解りやすかったので、他AL曲の文章と共に一部紹介します。
「ロマンスに目覚める妄想女子の歌」には妄想女子というよりむしろ等身大の喜怒哀楽が感じられる。また、「CHODAI」は繰り返される”CHO DAI”のフレーズが無国籍なビートとともに印象的な好曲。
「私のなんにもわかっちゃない」のサウンドには近未来を描いた1960~70年代のSF映画を思わせる雰囲気が漂う。(TSUNETOSHI KODAMA)
TSUTAYA on IDOL Vol.17より
妄想女子やCHODAIの解説も好きですが、「私のなんにも~」の60~70sの近未来のSFサウンドという表現、モヤモヤしていたのがまさにそれだ!と思いました。
引き込まれるスリリング要素は、このサウンドアレンジも大きい気がします。
さてここで過去のハロステより、15時代のLIVE映像を紹介します。
現在と比べると当時はまだ新曲だったので、歌唱面では不安定なメンバーも多いですが、個人的には今でもこの映像が好きですね。
※番組途中のLIVE映像のシーンから再生されます。
カントリー・ガールズ&アンジュルム新メンバー発表!モー娘。’15新曲公開!こぶしツアー MC:勝田里奈・野中美希【ハロ!ステ#143】 (ハロ!ステ)
36分35秒の佐藤のアクション好きだし、途中自体は~の生田も好きだ。
空耳は続くよどこまでも
他レビュー記事もご覧の方は、ご存知かもしれませんが、自分は非常に空耳率が高いです。
しかもつんく氏の詩は、もともとガタメキラ(Gotta make it love)の様に意図的に空耳感を持たせるフレーズも多いため、案の定この曲でも大事故が起きました^^;
細かくは多々ありますが、一番印象的なのは
Aメロの、“真剣勝負じゃい~途中辞退は許さない”というフレーズです。
“真剣勝負じゃい”はここは「謹慎勝負じゃーん」もしくは、「真剣勝負じゃーん」だと思ってた^^;まあこの位は良くあるのですが、問題は”途中辞退は~”のとこですね。
ALで歌詞カードを見るまで、数年も全然違うニュアンスで受け取っていたので衝撃でした。とはいっても(空耳時は)この曲に限らずですが、何か一つの別の歌詞として間違えていたというより
聴く時の気分によって歌詞が変化する、マルチ歌詞分岐システム(ゲームにおけるマルチEDみたいな感じ)として聴いていました。
一例を上げると・・・
・ウジウジ Die(ダイ)は 許さない
訳→ウジウジ死ぬのなんて絶対認めない!
・宇宙時代は許さない
訳→宇宙連邦の規約に乗っ取り、(この宇宙時代で)その行為は許されません!!(逮捕しちゃうぞ)
・宇宙自体は許さない
訳→地球は大好きだし、守りたい。でも、宇宙自体は許さない。(ひぇー)
みたいな感じで、国語的にはよくわからなくても、ニュアンスで読み取る感じで(このフレーズを歌い上げる男前な生田と共に)格好良くて好きでした。
まあ、今回の場合は、歌詞を知ってからは別の意味で痺れましたが。
この曲を初披露していたツアーの途中で鞘師は、年内の卒業を緊急発表しました。
(尾形春水における「A gonna」のように)
明らかにつんくによる鞘師へのメッセージが曲全体に含まれていて、当然卒業したいという話は聴いていただろうし、とは言えエースで、アイドルで言う旬と言われる17歳の時期ですから、会社側も時期を延ばすことや、色々と悩んでいた時期でしょう。
このあたりの話はこちらのモー想コラムにてガッツリ長文で語っていますので、気になる方はチェックしてみて下さい。
元カントリー 稲場の復帰は、元モー娘エース 鞘師 復活への序章か!? モー想。コラム
広島弁(鞘師は広島県出身)を思わす “真剣勝負じゃい!”を繰り返したあとで、
その後に “途中辞退はない。途中辞退は許さない” ですよ?インパクト絶大すぎる。
何も知らない人からすれば、公開処刑(パワハラ)的にも捉えかねないようなエッジの効いた歌詞です。
ただ、ファンの方ならばご存知の様に、鞘師はつんくをプロデューサーとして心から慕っていましたし、つんく氏としても鞘師を始め彼女達へは、愛ある故に時には厳しい視点で注意することもあったようですが、それは本気で彼女達の事を考えているからでもあり、モーニング娘。としてより良いカタチ(ビジョン)が見えているのに妥協は出来ないということでしょう。
それらが負担に感じるメンバーもいるかもしれませんが、殊更鞘師は目標を掲示されれば、それがどんなに高い場所でも、そこに向かって奮闘していく真面目な性格。
ということで”真剣勝負じゃい~途中辞退は許さない”に関しても
そりゃ人間ですし(各々が命を削ってやってる訳なので)、少しは
せっかくエースでやって来た(築き上げて来た)のに、中途半端で抜け出すのはナシだろ?
という部分もあるでしょう。
ただ、その意味合いよりも
ここまで、あなたも我々も相当の覚悟(真剣勝負)でやってきたのだから、ここで降りてしまうのは正直に無念だ。
ただ、あなたが今悩んでる違う道に進むとしても、それはもう自分一人の夢じゃ無い事を忘れるなよ。
そして、夢の続きは途中辞退せず、勝利を勝ち取りまた、また顔を見せに来いよ!!」という親目線での愛ある喝ではないかと思われます。
わかってる?わかっちゃない!! 自問自答の心の葛藤
一般にアイドルは2~3年で飽きられるとよく言われますが、鞘師の(結果として卒業までの)5年間の活動というのは決して短すぎる期間ではありません。
ただ、17歳という年齢を考えれば(一般のアイドル的には)ちょうど旬の真っ最中であるので、内外からも「い、今!?」という反応になるのは理解できます。
ダンス・語学留学というやりたい事への挑戦ではありますが、鞘師はグループでのポジションや、エース故の批判や中傷、会社の方針、様々な重圧にどこか “負けて”(破れて) の卒業という印象があると思います。
先日、12期メンバー尾形も短大への進学(専念)の為に卒業を発表しましたね。
この曲で繰り返される”わかってない、わかっちゃない“の歌詞は、その語感からもコミカルチックに軽く聞こえてしまう部分もありますが、
彼女たち若き少女達の、日々の活動の中での
「こうしないといけない / こうするべきだ」「でも私はこうしたい / これでいいのか」「わかってない?・・・わかっちゃない!」という自問自答の心の葛藤が表現されているのかもしれない。
そんな複雑な葛藤がありつつ、
それでも(上記フレーズ前)サビの最後は「女でも迷う日もあるけど 負けたまま終わるなんて 出来ないのよ」
で終わる。
そこに、作者の希望や願いという最終的な本意が込められていると感じました。
「私のなんにもわかっちゃない」イメージジャケット
さて、今回もこの曲をイメージして、ジャケットを描いてみました。
こちらです。
テーマは、「個性があればというけれど。」
人はそれぞれに、違った個性がある。大人たちは口を揃えて、個性を伸ばしなさい。
それ自体は良いことだし、素晴らしいことだけれど
時にはその個性が、人を遠ざけたり、自分自身をも困らせてしまう事もある。
でも前に進むには、皆それぞれが時には弱点にもなる 己の個性を武器にして、戦っていかなくちゃいけない。
そんなイメージと、”華やかさとその裏にあるダークな面”を意識して。
あとはSFっぽさもほんの少し足して描きました。
ということで、今回も結果的に(モー想。コラム寄りの)楽曲レビューになってしまいましたが
自分の選ぶ、2017年ベストAL第1位の『⑮Thank you too』を記念して「私のなんにもわかっちゃない」楽曲レビューを行いました。
次回は2位以降も踏まえた、2017年の個人的ベスト曲のまとめ記事を書こうと思います。
次回もお楽しみに
コメント
自分もこのアルバムはクオリティ高いと思います
大半がつんく楽曲で埋め尽くされていて割と自由に制作できたんじゃないかと思うほどつんく節が全開でそれが質の高さにつながっている気がします
多くがシングルにできそうなキャッチーな楽曲だと思います
シングルの重要性が大きくてコンセプトアルバムを作りづらいアイドルの場合
開き直って幕の内弁当式にいろいろシングル級の楽曲を詰め込んだ方が傑作アルバムになる気がします
私のなんにもわかっちゃないは自分も初めて聞いた時途中辞退が宇宙時代に聞こえました(笑)
改めて歌詞を読みながら聞くと鞘師里保へのやや辛口のエールに聞こえますね
鞘師加入以降の娘。の楽曲はさりげなくファンを挑発しているような印象が強まった気がします
「子供だと言うならそれでもまあいいけど後から現実受け止める事できるのかな」
「あなたの事情は関係ないから持ち込まないでください」(わがまま気のまま愛のジョーク)
「グズグズしてる男の子後悔しないでね」(Help me!!)
どことなくファン(主に男性)に向かって健全な応援をしてくださいと叱咤激励しているようなそんな痛快さがあります
自分は特に「青春 Say A-HA」が好きです
リズムや譜割が非常に細かくて難解でハロプロらしさ全開の曲だと思います
♪多分 多分♪のところがおそらくつんくの言う16ビートが良く表れていて
自分は音楽の知識がないので8分音符か16分音符か区別はつかないのですが
多分どっちかの休符が♪多分♪の頭に付けられている気がします
小さい「ん」が♪多分♪の頭にくっついて歌われているイメージです
ここが聞いてて気持ちよくて一番好きなパートです
その後「まそういう女でごめんなさい」と全く悪びれず歌ってのける落差も楽しい
複数A面&カップリング廃止が定番となってからは以前ならカップリングに収録されそうな楽曲はアルバムにまとめて収録されるようになりました
こうして傑作アルバムが作られるようになった反面
カップリング廃止は自由度の高い楽曲が気軽に発表しづらくなったり
普段メインボーカルを取ることのないメンバーにスポットライトが当たる機会が大幅に減ったりとデメリットも大きいですね
個人的には単独A面&カップリング復活が好みですが・・・
長々と失礼いたしました
コメントありがとうございます。そうですね、つんくさんが伸び伸び生き生きしてますね(同じくつんく節全開の研修生ALも驚きの完成度でした)。
もちろんアレンジャーの方々の力も大きいと思いますが、驚く程キャッチーな曲が多いですよね。今までは、ちょっと平坦目な「Style of~」の様な曲が何曲も入ってた印象なので、久々に奥行き感を感じました。
>鞘師加入以降の娘。の楽曲はさりげなくファンを挑発しているような印象が強まった気がします
ああーそうかもしれませんね。当時のまだ少し未熟なメンバー達とのギャップもあって
、少女達の決意表明感も伝わってきますね。
>リズムや譜割が非常に細かくて難解でハロプロらしさ全開の曲だと思います
♪多分 多分♪のところがおそらくつんくの言う16ビートが良く表れていて
自分も細かい部分は分かりませんが「青春~」はリズムもユニークで楽しい曲ですよね。
ご存知かもしれませんが、OGの田中れいなも先日自身のイベントでカバーをして(動画でも見れます)、同じくここのリズム感が好きで、後でつんく曲と知り、惹かれた理由に納得していたらしいです。
「気まぐれプリンセス」がモンゴリアンRockなら、この曲はサウンド的にも”和”の
印象が強く「サイバー江戸わらべPOPs」(長っ)という印象です。(歌詞の内容とズレてるのは承知ですが)時代物の着物着てズラ被って歌ってる映像が浮かんできます。
>普段メインボーカルを取ることのないメンバーにスポットライトが当たる機会が大幅に減ったりとデメリットも大きいですね
個人的には単独A面&カップリング復活が好みですが・・・
そうですね、他アーティストでも同じ様な傾向にありますが、A面曲はタイアップ面や色んな意味で見てくれ重視、ノンタイアップでもちょっと背伸びメジャー感(大きく言うと舞台化粧感)を付け足されるので、ある意味B面はすっぴん感というかそのアーティストの飾らないのびのび感が出るケースが多いですよね。(次回のSgは両A面でどちらもマニアックみたいですが)
B面復活の要望はよく見かけますが、ハロプロ全体の方針がこうなっているので難しいのかもしれません。まあB面曲がA面に格上げされて、衣装もPVも見れるようになったと考えれば幸せになれるんでしょうが、どこか舞台化粧がされてて、B面感とはちょっと違いますからね。
不幸(?)中の幸いとしては、全曲のインストVerが聴けるようになったのは良かったですね。