前回の記事 矢島美容室「YAZIMA魂 おかゆいところはございませんか」 ニホンノ強敵にパンチパーマ
からの派生記事で、今回は劇場版映画にテーマを絞って書いていきます。※軽いネタバレ有り
矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~
監督 中島信也、脚本 遠藤察男、配給 松竹
2010年4月29日公開の作品。
米ネバダ州で美容室を経営する矢島一家。ある日、父・徳次郎が家出(失踪)してしまう。
残された母・マーガレット、長女ナオミ、次女ストロベリー。この3人を中心に
それぞれの葛藤や学園生活などを交えながら、どのように日本でデビューする事になったのかも描かれた、米ミュージカル調のコメディ映画作品。(☆2.7)
個人的にはリアルタイムでは、サントラアルバムは気になっていて少し経ってから聴いたものの映画自体はずっとスルーしてました。
前回「YAZIMA魂」の楽曲レビューを書くにあたり拝見しましたが、感想が長文になってしまった為、こうして別記事になりました。
意外と王道的な物語!?
情報として商業的にはコケたことや、ネットでの酷評も知っていたので
期待無しで観たのが逆に良かったのか、純粋に楽しめました。(公開当時定価で観た方達とは目線は違うでしょうが)
ギャグや歌がありつつのファミリー映画という感じです。
矢島家や登場人物たちのキャラ設定が強烈なため、
ストーリーもハチャメチャかと思いきや
意外にオーソドックスで、先も読める展開なものの
誰がゲスト登場するのかというサプライズもあるので、最後まで飽きずに観れました。
ナオミと恋人との唐突な別れや、ストロベリーと友人達のやりとりなど
人物たちの心理描写が雑な所は少し気になりましたが
この位ライトな方が子供でも楽しめるし、そもそも感情移入して観るテイストでもない為、これで良いのかな。
マーガレット節の流石の安定ぶりや、迫力あり過ぎる11歳のストロベリー^^;と見てるだけで胃もたれしそうですが、
3人の中では劇中のナオミのヘアメイクが(浜崎あゆみと安西ひろこの中間感)アイドルぽくて可愛いなと思いました。PV撮影時も力入ってると思いますが、映画のメイクは俳優寄りの仕上がりで、また新鮮に見えるのでしょうかね。
石橋貴明、木梨憲武、DJ OZMAの3人も本人役で1シーンだけ出演しているのですが
ある意味ここは欲張って、もっと彼女らと絡んでも良かった気がするが
アッサリとしていたのが(バラエティ的な見せ場を捨てた意味で)逆に印象に残りました。
劇中ラストに見れる慎吾ママの「おはロック」のPVバリに、豪華ゲストも総出演で歌う「ニホンノミカタ」は見応えがあります。
ある意味このPVを撮るための長編映画だったとしたら、バブル期のバラエティぽくてそれはそれで有りだと思う。
「映画はうーん…」と言う人も、矢島ファンはここだけ観ても楽しめると思いました(結局その為には最後まで映画を見なくてはいけないのだが)。
音楽プロデュースは武部 聡志さん等も関わっていて抜かりない感じですし、
オール海外ロケで撮ったのかなと思えたし(恐らく国内だろうが)
映像的にもセットや小道具もちゃんと作りこまれています。
ほんとにこの作品は、“とんでも設定”な入口さえ入れば良くも悪くも、王道的な作品だと思います。(面白いかどうかは別として)
そして、この作品は俳優陣が豪華ですね。
大杉漣さんが出ることは認知していましたが
外人役でカツラも被って印象が違うので、ストーリーの途中まで気付ませんでした。
そして失踪した父・徳次郎の正体も映画後半で明らかになります。
日本の居酒屋で「ママのハマグリ最高~」(注:徳次郎の好物)という強烈なセリフと共に登場するのですが、その配役が予想外過ぎてぶっ飛びでしたね。
ここに関しては、キャスト陣を下調べしないで本編で観る事をお勧めします。(ただ、この作品Netflixや見放題系のコンテンツでは、ほぼラインナップから対象外で、YoutubeやAmazomビデオで単品300円位で観れるみたいですが、自分はレンタルで観ました。)
ミュージカルは必然に
そして、この映画でのミュージカル展開(シーン)を見て、
そもそもこのユニットは元々『ドリームガールズ』を踏襲していた事も思い出しました。
そういう意味では、このミュージカル風な劇調となるのも、映画化にあたって無理に付けた設定ではなく、ごく自然な流れだった訳ですね。
劇中歌「映画みたいな恋がしたい」をはじめ「MIRACLE」「HALF MOON」など
映画オリジナル曲も良曲が多いです。
3rd Sg「はまぐりボンバー」の別歌詞・Rock Ver「ピンクのボンバー」も
黒木メイサ演じるラズベリーとストロベリー達の
ソフトボール対決の挿入歌として使用されているのですが
戦闘曲としてハマっていて、本来このSg曲はこうした使用が効果的だったと思います。
そして、映画オリジナル曲の中でも群を抜いて耳に残るのがBRIGHT「Half Moon」です。
BRIGHTは、2007年にavexよりインディーズデビューした女性ダンスボーカルユニットで、2013年に解散したようです。
この「Half Moon」については情報がほとんど無いのでなんとも言えませんが、恐らくavex所属だった繋がりで(歌だけ)参加したという事でしょうね。
「Half Moon」は、70年代歌謡曲というイメージの曲で、少し古臭いメロにこれまたAsia風アレンジがマッチしている良曲です。
サントラでの再生数でもダントツTOPで聴いていたので
イメージでは、黒木メイサメインのクールなシーンで使われてるのかなと思ってましたが、
実際では、TV局のスタジオで柳原可奈子がセンターの黒人女性3人組がこの曲を歌っているという、色物的な使用のされ方でした。
普通に良い曲だし、成りきって歌う黒塗りの柳原も(こういう人いるよねという感じで)ギャグに振り切れている訳でもなく
特に笑えないし、かと言って曲の雰囲気に浸れないし「お、おう・・・」みたいなカオス感が。^^;
そしてこの映画の主題歌には
松田聖子とのタッグで、王道のドPOPソング「アイドルみたいに歌わせて」なのですが
この曲の背景にふと感じたことを、記事の後半で触れています。
幻となった続編、シリーズ化
映画終盤で、黒木メイサが「覚えてらっしゃい、この借りはパート2で必ず返すから。」とハッキリと宣言していました。
舞台挨拶や、イベントでも続編やシリーズ化を希望する声が、積極的にキャスト陣から発信されていた様です。
この舞台挨拶の動画でのやりとりでも貴重な空気感が伝わってきます。
アヤカ・ウィルソンの(媚び含むとしても)続編に出続けたいという発言、その後の周りの空気感にも和みます。
注目したいのはアミーゴアナ?から(恐らく)「続編について」の問いに答えるストロベリーの発言です。
「 だいたい5月の5日迄に全国でどれくらいの人が入ったかどうかで、松竹さんがパート2をやるかどうか決めるそうです。
ですから6日にはパート2をやるかどうか発表できると思います。」(ほぼ発言通り)
リアル過ぎて隣のメイサさんもひいてますが、思い切りマジ話でしょうね。^^
スタッフ的には、こういう裏話公開発言は「ひぇ~!」って感じでしょうが
タカさん、あ ストロベリーのこういう所、結構好きです。^^;
その他にも、イベントでストロベリーが「(興行収入)15億円を超えれば続編も」と、またしてもすごくリアルな^^;発言していた様ですが、
興行成績としては初週8位で、最終的に3,9億円という結果に。
続編も含めて、ユニット自体も自然消滅という結果になりました。
では、果たしてキャストやスタッフ達は現実的に作品のシリーズ化出来ると思っていたのでしょうか?
キャストもスタッフ陣もCDや番組の人気動向は逐一把握しているハズなので、シリーズ化を願いつつも、現実的によほどのミラクルが起こらないと難しいと分かっていたはず。
それは、この映画主題歌のコラボにも現れていたのかもしれません。
松田聖子とのコラボ主題歌は、最後の打ち上げ花火!?
この映画の主題歌は矢島美容室feat.プリンセス・セイコのコラボSg「アイドルみたいに歌わせて」。
個人的にこの曲も当時は、「一般層が離れちゃったから映画公開と言う事で、人脈使った豪華コラボ+無難なPOP路線で大衆受け狙いに軌道修正したのかなー」位にしか思ってなかったのですが
(「YAZIMA魂」レビュー記事で触れた「メガミノチカラ」と共に)10年弱経ってから評価ががらっと変わり、気に入ってこの夏はよく聴いてました。
爽やかに煌く世界観が、切ない閃光を放つアイドル曲です。
聖子さん自身にもどハマリしている往年のアイドルソングの世界観で、Sg的には矢島美容室がメインでゲストVoに松田聖子という形ですが
曲やPVからも分かるように松田聖子がセンターで、矢島家3人はバックコーラス的な立ち位置。矢島家3人の影でサポートするような紳士的な感じが逆に新鮮。
聖子さんのSgリソースを使用したのかな?と思うものの、avexからのリリースですし、あくまで兼ねてからの人脈による”友情コラボ”という側面が大きいのでしょうね。
ある種の異業種コラボは、リスナーから反感を買うことも多いのですが、悪乗りもし過ぎず、楽曲も良質という事もあって、このコラボは矢島サイドだけでなく聖子さんファンの方達にも喜ばれていた様です。
実際、このSgのamazonの商品レビューでも十数件中ほぼ全て、聖子さんファンサイドの「久々に王道アイドルPOPの新曲が聴けて嬉しい」という好意的な感想が多いです。
さてここで、注目なのはこのSgのPVでの描写。矢島家3人が、憧れだったプリンセス・セイコのライブにお出かけ~いつの間にかステージ(TVスタジオ)で共演というミュージカルな展開
これは劇場版のパート2の構想シーンが、このPVで体現されたのではないだろうか。
つまりは、撮影当時(2009年秋)はこの2組の共演は矢島家3人がニホンへ来日してからのエピソード、いわば劇場版2作目以降のネタとして温存していた気がするのです。(PVでは完全にアメリカ舞台でのセットですが)
妄想ですが、当初は前回レビューしたALタイトル曲「YAZIMA魂 おかゆいところはございませんか」が映画主題歌として予定されていたかもしれません。
それが、もう劇場公開直前の2010年春には矢島人気の低迷も予想以上に深刻化しており、この映画がコケれば続編どころかユニットの存続も危ない。ネタの温存(出し惜しみ)をしている場合じゃなくなったと。
もちろん作品にもよりますが映画の主題歌は、撮影を撮り終えて(クランクアップ後)も、劇場で流れる告知/特報の段階では主題歌がまだ未定の作品も多いですね。つまりは、CM用スポット等公開するまで、主題歌の差し替えは可能ということ。(途中のシーンでも挿入歌として使用されるとなるとそうもいかないだろうが、多くの作品と同じようにこの作品では主題歌はEDロールでのみ使用されている)
この映画の場合は、最悪公開1ヶ月前の各種メディア向けトレーラー公開までの期限ギリギリまで(浸透している「ニホンノミカタ」でいくか「YAZIMA魂」等の3月発売のALの新曲か、他者ビッグネームに依頼するか等)かなり楽曲を錯綜していた印象を受けます。
よってこのコラボも矢島プロジェクトとしては、最後の一手だった気がしてならないのです。
もう後がないという状況に、急遽その続編の2組のコラボネタを先出し解禁させたのではと思います。
それならば今作のプリンセス・セイコの出番の少なさや、作中とのビジュアルやキャラ設定(そもそも作中ではプリンセスセイコは、歌手ではなく天の女神様の様な扱い)もバッサリ切り捨てている点も合点がいきます。
だからこそ「続編」「シリーズ化」等、あちこちプロモの場で発言していたのも含めて、全てがもう後がないという事がわかった上で出し惜しみなしの、最後の打ち上げ花火だ!!みたいなイサギ良さと、切なさの閃光のようなものをこの曲から感じます。
例えて言うなら、毎日の様に一緒に過ごしていた友人たちと、学校の卒業式の帰りに別れる時みたいな感じですかね。直接的には言わないけど「それじゃあ、バイバイ」の中に(また明日)と最後の別れかも知れない(さよなら)が同時に込められている感じ。
爽やかで華やかな曲調と世界観だからこそ、何倍もの破壊力の切なさや、数字に左右されるショービジネスで最後まで奮闘してやろうという彼(彼女)らの姿が格好良くて、感動すら感じます。
黒木メイサや若者層も意識した俳優陣、実力派/豪華ゲストの出演。
松田聖子の友情出演、映画主題歌をコラボしてSg発売。
全国握手会やイベント開催、映像も音楽面でも一定以上の水準を死守など。
バブル期の勢いは失ったものの、フジのバラエティ班が鬼門の「バラエティから映画に進出」に勝負に出た。
これでもかというダメ押しや、意地(プライド)にも見れます。
ある意味、本人達もスタッフ達も
これだけ手を尽くして、数字が伸びなかったらしょうがない、きっぱり諦めがつくと。
やれる事はやったぞ!と逆にスガスガしい感じもあるかもしれません。
そういう意味で、徐々にフェードアウトというよりも、いさぎよく全方面にドカーンと笑顔で終われた印象なのが、せめてもの救いか。
ただ、明確に解散等はしていないようですし、
2019年6月の氣志團のライブにマーガレットがサプライズで登場したり ※BARKSさんの記事に飛びます
(その後9月に行われた氣志團万博2019に木梨憲武のゲスト出演の告知)
会場である木更津は開催の直前に台風の被害により大きな被害を受け、このフェス開催も紙一重の状況にありましたので、状況によっては矢島家2人の演目予定もあったかもしれません。
矢島ファンの方々と共に今後も彼女達の活動を、少しの期待や恐怖と共に待ちたいと思います。
と言う事で今回は、『矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~』のレビューと続編等を考察してみました。
久々映画レビューになりました。とりあえず、次はあの少年少女の映画記事を早く完成させたいところ。