シャッフルレビュー第57弾。
今回選んだ曲は、長らく活躍しているあのバンドの曲です。
単調な日常の、心の空洞を覗く
Mr.children「雨のち晴れ」
1994年9月4日発売のAL『Atomic Heart』収録曲。
・作詞 桜井和寿 ・作曲 桜井和寿 & 小林武史 ・編曲 小林武史 & Mr.Children
レゲエアクセントに、コミカルで軽快なミディアムPOPS。
サラリーマンの浮かない日常生活が、3番まで続くABメロの歌詞で綴られる。☆2.9
彼らの他の曲の世界観と比べても、サ〇エさん的な日常の距離感なんですよね。
なのでどこか「トホホだよマス〇さん」な、オスとしての情けなさ(哀愁)もあったり、親しみを感じる世界観です。
という事で、この楽曲の世界観はカッコ良いか、悪いかで言えば、(表面上は)カッコ悪い曲ですかね。
ただそんな、ある種システム化された様な、ロボット的労働者の情景でさえも、平和で退屈な子供(当時の自分)の視点から見たら、
“世の中に毒された、無気力な大人の無彩世界” に美学を感じて、憧れていた部分もありましたね。
個人的には3番のAメロ「優秀な人材と勘違いされ~」から、
Bメロ「その日暮らし楽しく生きりゃいいのかもしれないね
そんな事思いながらも また日が暮れるああ」の無慈悲さと、投げやりさが心地良くて好きです。
ミュージカル風!? Remix Ver こそが真髄。
この曲は、94年のAL曲として世に出た翌年、Sg『es ~Theme of es~』(95)のB面にジャングル風サウンドやパートも追加されたRemix Version(「atomic heart」のLive Tourで披露されていた)として収録。のちに発売されたB面集のAL『B-SIDE』にも収録されました。
このジャングルとは、レゲエよりテンポが速い感じのジャンルというか、当時のJ-POPで分かり易く採り入れられているのはH Jungle with tの「WOW WAR TONIGHT~」(95)ですね。このRemix(実際はLive ver)は、そのジャングル風アレンジも入っていると思われる。
実に10分近くもあるこのVerは、1曲の中で起承転結が描かれており、さながらミュージカルの様であり、原曲とはまた違う雰囲気で楽しめる。
これまた新規で追加されたラストの”walk on the rainbow”(※)のフレーズで、ファンタジーさを演出しつつも、同時にカーテンコールでエンドロールを背景に拍手喝采を浴びているかのようでもあり、このドラマが綺麗に幕を閉じる感じも良い。
※何度聞いても聞き取れないので、正確には違うと思います。「飛び出せRainbow~/トビウオRainbow~」とも聴こえる^^; 謎。
自分のこの曲との出会いはRemixの方でした。『Atomic Heart』はシンプルなジャケットも良かったし、子供ながら彼らのファンだったので欲しかったが、既にSgで「CROSS ROAD」「innocent world」も持っていた為、限られた小遣いの中で更に3000円を貯めるのは現実的では無く、翌年「es~」のSgをレンタルした際にB面の曲として聴いたのが初聴だった。
なので、自分にとってはこれがオリジナルVerだった訳で、素直に受け入れられた。初めは「es~」目当てだったものの、「雨のち晴れ」の方が気に入り、録音したテープを巻き戻して聴くことが多かった気がする。
タイトル的に浮かんで来てしまったアーサーミラー『Death of a Saleceman』ほど、悲劇的な訳でもなく
それぞれのエピソード(歌詞)をとっても、特別劇的なドラマが起こっている訳でもない。
でも、だからこそドラマのような事すら起こらない、短調な日々の生き苦しさと、リアルな哀愁が表現されているのかなと思います。
そんな主人公の日常と対照的に、曲の構成はドラマチックに展開されている事で、エンターテイメントな楽曲となっています。
陰鬱な心模様は、むしろ「曇りのち晴れ」!?
“優秀な人材と勘違い“されたり、”新人のマリちゃん“に味気なさを感じたり、”上司に愚痴“を言われたり。
心情的に晴れ晴れとしていないのは、分かりますが、ただ晴れではないとしても、雨と言うほどひどく打ちひしがれている感じでもない。
まあ”晴れ”との対比で分かりやすく”雨”という表現だとは思うが、歌詞の中で綴られている、モヤモヤとどうも何事もスッキリしないやや陰鬱な感じは、天気で表すとドンピシャで”曇り”が当てはまるハズ。
斜に捉えるとタイトルは「曇りのち晴れ」の方が適切なのかもしれません。
でもタイトルや歌詞にした時のPOPさや、インパクトは雨の方が明らかに強い。
また、ラストの”いつの日にか 虹を渡ろう~”に綺麗に繋がる事を考えると、やはり「雨のち晴れ」なんでしょうか。
そして、
Remixで印象的なのは、追加されたこのパートですね。
〇月日。7時起床、17時退社、24時に寝る。
こうして「〇月日 7時起床 5(17)時退社 12(24)時に寝る」
字面上だけで取ってしまえば、一見毎日規則正しい生活で、何か問題なの?健康的だとすら思えてしまうかもしれない。
ただ、これをひたすら無感情で淡々と桜井氏が読み上げ、ヒステリズムの高揚と共に、表面上で語られない爆発しそうな心の反動をバックのサウンドで具現化されている。
この2つの対比が同時に進行する事で、[やばいぞヤバイぞ・・・!!!]とリスナーの内面にも訴えかけてくる所が、非常にスリリングであり、ドラマチックなのである。
そのピークに達した後に、雷と雨のサウンドが流れ、雨が降り始める・・・あれ??ここで、やっと雨が降る?
ん!?今まで何百と聴いてきたはずだけど、1番も2番も雨の状態で、このCメロがピーク(台風状態)で、Cメロ開けて晴れというイメージだった。
普通に考えたら嵐のような瞬間(Cメロ)が通り過ぎた後なわけで、ここで、鳥のさえずりか何かで、晴れの到来を演出するのではないか。そうではなく、ここで雨。
という事は、やはりそれまでは、〇月×日のくだりも含めて、ずっと曇の状態が続いたという認識で合っていたわけか。
てな事で、改めて曲中の時系列の心模様/天気をタイトルで表すと「曇りのち雨、やがて晴れ」というのが正解か。
まあ、正解とは言っても、リスナーそれぞれに解釈や答えもあると思います。今回、改めてこの楽曲の懐の深さを感じる事が出来ました。
イメージジャケット
今回も曲をイメージして、イラストを描きました。
こちらです。
地球/太陽の周りに12個の指針、つまりはアナログ時計になっています。
短調で地味に見える部分と、内面での湧き上がるもの、などをイメージして描きました。
今気付きましたが1~5の数字盤は雨、後半は雷も混じりっつつ晴れで、結果的に雨のち晴れの時間枠になってますね。
一度、カラフルに色付け後にデータ消失して。その時はその時で何か違うと思っていたので
結果的には、その時の反省を生かして色を落ち着かせましたが、今回も何か違う。
うーん、カラーが苦手だ。モノクロで十分だったかもしれない。
今回の記事作成にあたり、久々にこの曲を何度も聴きました。
平凡で退屈に思えることこそが、実は幸せだとはよく言いますが、
それをまた違う角度から感じられる楽曲だなと思いました。
という事で、今回はMr.Children「雨のち晴れ」楽曲レビューでした。
次回もお楽しみに。