『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』レビュー 可能性すら人生の一部

今回は、DVD、Blu-ray発売(4月)を記念して『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』アニメ映画版のお蔵入り感想レビュー(ネタバレ有り)です。

なお、アニメ映画公開前に、主に奥菜恵の実写版について語った(ネタバレ無し)記事はこちらです。

「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」夏の1993 ドラマで見るかアニメで見るか

アニメ版『打ち上げ花火~』 の活躍

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (YouTube ムービー

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

・監督 武内宣之 ・脚本 大根仁 ・原作 岩井俊二

声の出演 広瀬すず、菅田将暉、宮野真守 ほか

興行収入は15,9億円で、同年の邦画作品『本能寺ホテル』(10.1億)や『映画クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』(16.2億)辺りと比べて、また”花火”という季節モノを考慮しても、だいぶ健闘したと言えるのではないでしょうか。

主題歌のDAOKO×米津玄師『打ち上げ花火』もスマッシュヒットし、2017年を代表する1曲にもなりました。

ネット上での感想は賛否は分かれてましたね。自分は実写版のファンでもありましたが、感想を大きく言えば、スクリーンで観れて良かったです。

声優陣は宮野真守はさすがプロの中学生という感じ。菅田将暉は無難な感じで、狙いなのか広瀬すずのたどたどしい感じは、実写の奥菜恵の棒読みのそれを彷彿とさせる物で良かったです。

自転車や電車のシーンなどスピード感や、半円状に広がる花火など、アニメならではの演出、映像美も随所にありましたし、ちょっと懐かしみつつも、新作を見るような気持ちで見れました。

キャラの描写について

思い入れがあったので、グッズも色々買ってしまいましたが、なずなが可愛くなかった。いや、正確には可愛いと思えるシーンもあったのですが、どちらかというと典道の方が愛嬌のある可愛い感じで、なずなは男顔でかつ絵が安定してないというか。広瀬すずの声も悪くないだけに、そこだけ残念です。

奥菜恵もどちらかと言うと猫顔か犬顔かで言えば犬顔だし、男女の体格バランスが逆転する前の思春期初期の表現の一つだとは思いますが。

絵もシーンによって、顔のタッチが違う気がしました。(『幽遊白書』の暗黒武術会ほど酷くは無いですが)

あと、なずなだけキャラの描写がどことなく一昔前のエ○ゲーぽさを感じました。生々しいというか、ちょっとクシュクシュな感じというか。そもそも視聴者は、この作品にエロは求めてない気が。まあ奥菜恵も色っぽさはありましたが、アニメ版青春のドキドキ感よりも ちょっとあざとさを感じました。

「瑠璃色の地球」に見る、突き抜けたリアル

事前情報として、松田聖子の「瑠璃色の地球」を広瀬すずが劇中でカバーして、挿入歌で流れるという認識でいたので、どこのシーンでBGMとして流れるのだろうと注目していました。

実際は列車の中で、母親(声:松たか子)がカラオケでよく歌っていた曲という事で、なずな自身が典道の前で歌いだし、途中から辺りの景色も姿形を変えはじめ、馬車も飛び出し最後は天空の舞踏会?(うろ覚え)なメルヘンファンタジーの世界に変わってしまうと。

あの、メルヘン展開についても賛否両論あるだろうと思いますが、自分としては笑えるくらい唐突すぎる展開が逆に「これはなずなの中の空想世界なんだ」とスパっと振り切れてて気持ちよかったし、あれはアリだと思いました。

子供の頃に夢を語る時や、ごっこ遊びやゲームやアニメの登場人物の真似をする時など、皆誰だってあれに近いファンタジーを自分の瞳に生み出していたと思うんですよね。だから、あの突き抜け感こそが、逆にリアルだなと思ったのです。

「瑠璃色の地球」に関しては、特に不満はありませんが、母役(松たか子)がこの曲をよくカラオケで歌っていたとわざわざエピソードで出すならば、松たか子が1フレーズでもなずなの歌声とリンクして重なり歌うシーンがあっても良かったのかなとは思いました。

彼女自身「アナ雪」以来の声の仕事で、狙い過ぎ!と思われるかもしれませんが、あそこまで突き抜けた演出シーンならば、サービスでそれもアリだったのでは?という気が。(むしろ、もともと制作側は途中段階迄その案も考えていたキャスティングな気もするが)

クライマックス

クライマックスのもしも玉が飛び散って、各シーンが同時に再生というか動いているシーンが感動しましたし、今思い出しても大好きな場面です。

あの破片に写っていたのは、様々な選択肢の先の枝分かれした、もしかしたらなずなや典道が体験していたかもしれないシーン、ということなのかもしれません。

“まだ体験していないシーン” や、”選ばずに体験できなかったもうひとつのシーン” 、”これから出会うかもしれない未知のシーン” など。

でも、現実的には人生はその中から実際に選んだ1本道だけが自分の人生とは理解はしても、あまり響かない考え方だなと思います。

それぞれの選択肢の先の出来事を、ただ夢や幻想と片付けてしまうのは、自分は好きではないです。どれも含めて、可能性さえ全てが自分のハズで。

イメージ

時間枠イメージ1

一般的に時間枠の捉え方では、上記の絵の様に過去、現在、未来が一直線上に並んでいると思います。

過去の自分がいたから(その経験と共に)、今の自分がいて、今の自分が未来の自分を~と一直線で歴史の時間枠が繋がっている。

だから、当然後ろ(過去)側には戻りたくても戻れないし、通り過ぎた過去は過去でしかなく、未来へ向けて進むしかない。

物質的にはそうでしょう。しかし、自分としては

今の自分も、過去の自分も、未来の自分も、全てが横並びで同時に(生きて)動いていると、なんとなく考えています。

(このイメージでは縦並びですが、横並びという意図です)

時間枠イメージ2

それぞれの時代の自分が横並びで(もしくは全て散らばって)それぞれのシーンで同時に生きている気がするのです。

それぞれの年代の自分が、それぞれの時間枠の中で今現在形で動いているんだと。

変えられないことにしがみつくとか、現実逃避する訳ではなく。例えば過去は変えられないという物質的理論はちゃんと理解した上で。

その上で、だからといって精神面での時間論もそこ(物質論)に合わせて縛り付ける必要もない訳で。

つまり、今の自分よりも過去に後悔する事があっても、「まあ過ぎた事だし」という物質面では受け入れるのと同時に、各々の精神上では実際にまだ現在形で悔しい思いをしている最中だったりするならば、今を頑張る事でその時の自分を救うことだって(現在形で)可能なんだってことです。

それによって昔の思い出もより楽しくなったり、奥行が増えることでさらに思い出が増えるかもしれない。そして、そのエールを送った過去の自分がより生き生き動くことで、未来の自分へ増幅したパワーを(現在形で)届けてくれたり。

今の自分と未来の自分の関係に関しても全く同じように、それぞれがそれぞれの自分を頑張ることで、お互いに励まし合える(相乗効果)というか。

それは、もしもの先の自分や、自分の知らない未知の自分においても同じです。

思考によって、時を越え、その先の自分を(時には他の誰かさえ)救うことが出来るかも知れないのです。この考え方も、ただの現実逃避や悲観的だと思われる方は、仕方無いかもしれません。

ただ、それぞれの時間枠の中で自分が頑張っているのだとしたら、自分は今この体を動かせる(任せられている)時代の自分を、責任持って頑張ろうという非常にポジティブな考えだと思っています。

まあそうは言っても、自分でも忘れてしまう時もありますし、こういう”心がけ”みたいなものは、目に見えない感覚的なものなので、言葉にするのも難しいですね。だからこそ絵に描いてみたりしましたが、分かり易くなったのか微妙・・・。空回りして「何の宗教だよ!」と思った方もいるかもしれませんが^^;

だからこそ、このクライマックスのシーンを見て、(実際の意図はもっとシンプルだと思いますが)まさにそれが映像として具現化されている様な気がして、感動して鳥肌が立ちましたね。「そうそう、これだよ」と。

ドラマ版と見比べて

実写版にも同一のシーンがあって尚且つそこでの設定が変更になっていた箇所で気がついたポイントを

・もしも玉の存在 まあアニメですし、このアイテムがある事で、話のパラレル展開を自然に受け入れやすくなったのかなと思いました。

ただ、公開当時評価が分かれた中で、ストーリー展開が唐突すぎてついていけなかったという声も多数見受けられたので、原作を知らない視聴者にとっては、もしも玉だけだと分かり辛い側面もあったのかもしれません。

・舞台が小学校から中学に ここは変えなくても、という気がした。なんとなくビジネスアピールとしてヒロインキャラの制服姿はポイント高いのだと思われるが。反面、祐介のウ○コ押しは、小学生ぽかったが。

・プールでの典道と祐介のレースになずなも参戦

これは、隣で華麗に泳ぐなずなに見とれて典道がターンの際に足を蹴り違えて怪我をする流れになってましたが、ここに関してはストーリー上特に変更する意味は無いように思われ。なずなのスクール水着というファンサービスだと思われ。

・屋台で出会うエセ花火師(蛭子能収)が、のんべえだけど本物の花火師になっている

これに関しては、変にまた打ち上げのシーンだけのために(花火師Aの様なモブだとしても)また新たな登場人物を出すよりは、よほどいいだろうと思ったので、良い変更だと思います。むしろ、ドラマ版でも蛭子さんが最後の1発を打ち上げてくれても良かったかもしれません。でもあのドラマの花火師のおっちゃんのキャラもイカしてたので、そこはそのままでいいか。

・「み づ き あ り さ ぁー!!!」

観月ありさは変わらずでしたね、パンフによると候補で”広瀬すず”や人気2次元キャラの名前もあったようです。2017年に、中学生が観月ありさってどうなの?という意見もあると思いますが、ドラマの主演の連続記録は現在も更新中ですし、大きなスキャンダルイメーージが無いのもポイントだと思います。

今となっては大御所(は大げさか)ですし、人並み外れたスタイルを持ちながらも、どこか親しみもあって(馬鹿にしてる訳じゃなく)どこか自然と笑えてくる女優さんといいますか。

原作でもこのシーンと名前のチョイスは絶妙過ぎて、あまりに愛されていたシーンだったと思うので、変に変えずに正解だと思いました。

・主題歌

予告編などを見るとやはりセリフなどからどうしても実写版の映像を思い浮かべて、まあアニメ版も頑張ってるけど・・・という感じに。

しかしこDAOKO「打ち上げ花火」が流れると毎回そこでハッと我に返るというか。ああ、原作は同じだけど、これはこれで別作品なんだよなと気付かされるというか。

この曲だけは唯一、実写版の延長線上からも大きく離れた、新規要素感が強いのでこの曲がスイッチとなり、アニメ版の良さ・魅力に注目しようと気持ちが切り替えられます。ある意味一番大きな違いであるポイントですね。

また、挿入歌である「Forever Friends」のカバーは、DAOKOさんのも決して悪くはないですが、原曲が完成され過ぎている(本人がセルフカバーしても越えられないかと)ので、DAOKOさんで好きになった方は是非原曲も聴いてみて下さい。

という事で、記事のほとんどは去年夏に書いたまま、お蔵入り状態でしたが、無事アップ出来て良かったです。

打ち上げ花火、今度はどこから見たいだろう?

そんな事を考えながら、また見たい作品でした。

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